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ペーパーボーイ 真夏の引力（THE PAPERBOY）
（2012年 アメリカ）（上映時間1時間47分）
監督：リー・ダニエルズ
出演：ザック・エフロン、ニコール・キッドマン、マシュー・マコノヒー、ジ
ョン・キューザック、メイシー・グレイ、デヴィッド・オイェロウォ、スコッ
ト・グレン、ネッド・ベラミー、ニーラ・ゴードン
＊新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開
ホームページ http://paperboy-movie.jp/
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＜ストーリー＞
1969年、真夏のフロリダ州。大学を中退して父の営むローカル新聞の配達を手
伝う青年ジャック（ザック・エフロン）。ある日、大手新聞社に勤める兄ウ
ォード（マシュー・マコノヒー）が、同僚の黒人記者ヤードリー（デヴィッ
ド・オイェロウォ）とともに帰省する。２人は、４年前に起きた保安官殺害事
件の犯人で死刑囚のヒラリー（ジョン・キューザック）に冤罪の可能性がある
と考え、調査に来たのだ。そんな中、運転手として取材を手伝うジャックの前
に、獄中のヒラリーと婚約したという女性シャーロット（ニコール・キッドマ
ン）が現れる……。
＜レビュー＞
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冤罪事件を通して描くおどろおどろしい人間の欲望
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人種差別主義者の白人保安官が殺され、その犯人として死刑判決を受けた白人
男性の冤罪疑惑をめぐるお話。というと、ガチガチのサスペンスのようですが、
そうではありません。むしろ人間ドラマとしての側面が強い映画です。
主人公兄弟と家族同然に暮らしていた黒人メイドの証言という形でドラマが始
まります。父が経営する新聞を配達している挫折した元水泳選手のジャック。
新聞記者である彼の兄ウォードが、同僚の黒人記者とともに帰省し、保安官殺
人事件の再調査を始めます。ジャックはそれに運転手として協力します。
そして、もう一人、この一件に関わってくるのが、獄中の死刑囚と婚約したと
いうシャーロットという女。うぶなジャックは彼女にひと目ぼれしてしまいま
す。
この映画の最もすごいところは、時代や土地柄のリアルな捉え方。南部のうだ
るような暑さ、湿地帯のあまりにも不気味な姿、黒人差別や法を軽視する風潮
……。スクリーンの中の世界が、観客にストレートに伝わってきます。
サスペンス的な要素はあるものの、中心的に描かれるのは人間の奥底にある欲
望です。出世欲、性欲、支配欲、権力欲など、登場人物たちの様々な欲望がう
ごめきます。おどろおどろしいほどの底なしの欲望です。
冤罪事件の謎解きと同時に、そうした欲望がどんどんスクリーンを覆い始めま
す。初めは正義感に燃えるジャーナリストのように見えたウォードや黒人記者
にも、その裏にどす黒いものが秘められていることが、明らかになってきます。
一方、この映画には青春映画の要素もあります。事件の渦中に巻き込まれた青
年ジャックの成長のドラマです。彼が恋したシャーロットは、とんでもないビ
ッチ。しかし、それがかえってジャックの心に火をつけ、夢中にさせてしまい
ます。
明るさはみじんもありません。ねっとりとまつわりつく南部の暑さを背景に、
ドラマは破滅的なラストへと向かいます。ジャックにとって、青春時代の通過
儀礼というにはあまりにも、重苦しく、苦い、ひと夏の出来事です。そして、
観客もまたジャックと同じ思いを抱えたまま劇場を後にしなければいけません。
ジョン・キューザックの狂気に満ちた演技、マシュー・マコノヒーの抑制的な
演技など、いずれも印象的ですが、やっぱりこの映画の演技賞はニコール・キ
ッドマンのビッチぶり。エロすぎるし、コワレすぎです。あれじゃ、ジャック
がやられちゃうのも当然。夢に出てきそうな演技です。
監督は『プレシャス』のリー・ダニエルズ。人間の内面を容赦なくえぐり取っ
た異色作で見応えがあります。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（90点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2013年8月7日（水）ヒューマントラストトネマ有楽町にて。午後2時35分の回
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