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ペコロスの母に会いに行く
（2013年 日本）（上映時間1時間53分）
監督：森崎東
出演：岩松了、赤木春恵、原田貴和子、加瀬亮、竹中直人、大和田健介、松本
若菜、原田知世、宇崎竜童、温水洋一、穂積隆信、渋谷天外、春風ひとみ、根
岸季衣、長澤奈央、大門正明、佐々木すみ江、正司照枝、島かおり、今井ゆう
ぞう、長内美那子、志茂田景樹
＊ユーロスペースほかにて全国公開
ホームページ http://pecoross.jp/
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＜ストーリー＞
離婚して子連れで長崎に戻ってきた岡野ゆういち（岩松了）。母のみつえ（赤
木春恵）は、夫に先立たれて以来、認知症が進行していた。ケアマネージャー
の勧めもあり、みつえを介護施設へ預けることにするゆういち。個性的な入居
者たちとグループホームで暮らし始めたみつえは、生前酒浸りだった夫（加瀬
亮）や幼なじみ（原田知世）らと過ごした日々に思いを馳せるのだが……。
＜レビュー＞
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認知症の母と息子の交流をユーモラスに。最後は感動も
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長崎県在住の漫画家・岡野雄一のエッセー漫画を、人情喜劇の名手・森崎東監
督が映画化しました。森崎監督の作品は『ニワトリはハダシだ』以来９年ぶり。
離婚して息子とともに故郷の長崎に帰ってきた岡野ゆういち。母・みつえは父
が死んでから認知症が出始めています。最初は自宅で暮らしているものの、次
第に症状が進行し、ケアマネの勧めもあって母を施設に預けるゆういち。
そんなゆういちと母との交流がユーモラスに描かれます。全編に認知症をネタ
にした笑いか満載。例えばゆういちのことを忘れた母が、ハゲ頭を見て思い出
したり（ハゲ頭ネタはその他にも登場）。母が施設に入ると、そこのユニーク
な入居者や家族の姿も盛り込んで、笑いを生み出します。
ただし、大げさすぎたり、強引な笑いではありません。何せ原作者自身の体験
が反映されているので、リアリティがたっぷり。しかも、生き生きとした描写
なので、無理なく笑えます。認知症をネタにした笑いなどというと、「不謹慎
だ！」と思う人もいるかもしれませんが、そういう感じはまったくしません。
おまけに、ただ笑えるだけではありません。現在進行形のドラマの合間に、母
の過去をさりげなく挟み、彼女の人生を振り返ります。幼い頃の妹や友達との
思い出、原爆が落ちた日のこと、酒癖の悪い夫との結婚生活、幼なじみとの悲
しい別れ。それらが観客の心を揺さぶります。かといって押しつけがましさは
なく、ドラマの進行とともに自然に切なさが募っていきます。
そしてクライマックスは、あまりにも美しくファンタジックなシーン。有名な
ランタンフェスティバルの会場で、時空を超えたシーンが現出します。ここも
またわざとらしさのない自然な見せ方。だから、素直に感動できるのです。そ
こからエンディングの一青窈の歌に行くところは、涙ウルウルものの展開。
暗くなりがちな認知症というネタを軽やかに描き、１人の女性の人生をスク
リーンに刻みつけた映画。笑いと押しつけがましさのない感動を無理なく同居
させた、森崎監督の手腕はさすがです。主演の岩松了、赤木春恵に加え、脇役
たちの存在感も見逃せません。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2013年11月17日（日）新宿武蔵野館にて。午後1時の回
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