世界にひとつのプレイブック(SILVER LININGS PLAYBOOK)


(2012年 アメリカ)(上映時間2時間2分)
監督・脚本:デヴィッド・O・ラッセル
出演:ブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァー、クリス・タッカー
*TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://playbook.gaga.ne.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

<ストーリー>
妻の浮気が原因で躁うつ病になり精神病院に入院したパット(ブラッドリー・クーパー)。ようやく退院したものの、突然キレてはトラブルを起こす日々だった。そんなある日、友人に誘われたディナーでティファニー(ジェニファー・ローレンス)と出会う。彼女もまた、夫を事故で亡くしてから心にトラブルを抱えていた。パットの妻と知り合いだったティファニーは、「よりを戻せるように手助けしてあげる」と提案。その交換条件として、ダンス・コンテストにパートナーとなって出場することを迫るのだが……。

<レビュー>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
精神トラブルを抱えた男女の恋愛を描いたツボを押さえたラブコメ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

妻に不倫された男と、夫が事故死した女による傷ついた者同士のラブ・コメディ。ありふれた話と思いきや、脚本・演出・演技ともツボを押さえた上質の映画でした。

ユニークなのは2人の男女がどちらも精神にトラブルを抱えているという設定。パットは妻に不倫されて躁うつ病になり、母親が裁判所にねじ込んで退院させたものの、相変わらずブチ切れて周囲を困らせます。しかも、彼は今でも妻とやり直せると信じています。

一方、ティファニーは夫が事故死したショックで、職場の同僚全員と寝てクビになり、こっちも時々ブチ切れます。

精神トラブルを扱うのは難しいのですが、そのへんのバランス感覚が見事。やり過ぎないし、物足りなくもないし、絶妙の描き方です。

そんな2人を中心に、パットの両親なども交えた抜群にウィットに富んだ、ユーモラスな会話がこの映画の最大の魅力。しかも、会話の中にグサッとくる言葉も散りばめられていたりします。

パットとティファニーにとって最大の転機は、ダンス大会への出場。気乗りしないパットですが、ティファニーに妻との仲を取り持ってやると言われてパートナーになることを承諾。

これもありがちな展開ですが、いろいろと工夫して見せてくれます。クライマックスのダンス大会。プロ級の出場者に混じった2人は勝負にならない……と思いきや、「賭け」を使った意外なオチで大いに盛り上げます。何ともウマイ仕掛けですねぇ。

ラストは完全な予定調和。それでも、そこに至る過程がいいので、素直に受け入れてしまいます。これぞハッピーエンディング!どんなにドン底でも、いつかは前に進めるという気持ちにさせられました。

スティーヴィー・ワンダーの「マイ・シェリー」をパットのトラウマソングにするなど、音楽の使い方も巧み(昔のTVドラマ「アリー・my・ラブ」の音楽を思い出してしまいました)。

俳優陣の演技も見事。精神トラブルによる感情の起伏を表現したパット役のブラッドリー・クーパーとティファニー役のジェニファー・ローレンスに加え、パットの父親役のロバート・デ・ニーロ、母親役のジャッキー・ウィーヴァーの4人がアカデミー賞の4つの演技部門すべてで候補になったのも納得です(結局、ジェニファーが主演女優賞を獲得)。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
(90点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2013年2月24日(日)ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時30分の回


[「せ」のページ]