|
シャドー・ダンサー（SHADOW DANCER）
（2011年 アイルランド・イギリス）（上映時間1時間41分）
監督：ジェームズ・マーシュ
出演：アンドレア・ライズブロー、クライヴ・オーウェン、ジリアン・アンダーソン、リッド・ブレナン
＊シネスイッチ銀座ほかにて公開
ホームページ http://shadow-dancer.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
1970年代の北アイルランド。幼い頃に弟を失ったコレット（アンドレア・ライズブロー）は、IRA（アイルランド共和軍）の活動に身を捧げていく。1993年、ロンドンでの爆破未遂事件の容疑者として逮捕された彼女は、MI5（イギリス諜報局保安部）の捜査官マック（クライヴ・オーウェン）から、スパイになるように迫られる。引き受けなければ、幼い息子を置いて拘留されるという。仕方なくスパイになるコレット。だが、やがてマックはコレット以外のスパイの存在を疑い始め、上司が隠している"シャドー・ダンサー"の秘密を探っていく……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北アイルランド紛争を背景にした緊迫のスパイ・サスペンス
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
密告者をめぐるクライム・サスペンスです。この手の映画はよくありますが、この作品は北アイルランド紛争が絡んでいるのがポイント。現在は和解したものの、以前は激しい争いを展開していたIRA（アイルランド共和軍）とイギリス当局のバトルがリアルに描かれます。
IRAによる爆破事件の容疑者として逮捕されたシングルマザーのコレット。MI5の捜査官マックによってスパイになることを強いられます。そのうちにIRA内のスパイ追及に追い詰められていきます。一方、マックはコレットのほかにスパイ（暗号名シャドー・ダンサー）がいて、コレットがスケープゴートにされているのでは？と疑います。
社会的背景の強いドラマらしく、リアルでサスペンスフルな映像が目につきます。何でもない風景も、手持ちカメラで怪しげに見せるなど、バツグンの雰囲気作りです。監督のジェームズ・マーシュは、ドキュメンタリー映画『マン・オン・ワイヤー』で、2008年度のアカデミー長編ドキュメンタリー賞を獲得しただけに、ドキュメンタリータッチの映像が見事。北アイルランドやロンドンの天気なども効果的に使われています。
一応和平条約に調印したものの、IRA内部の不満は根強く……といった当時の時代的背景もきちんと描かれ、ドラマの疑惑を増幅していきます。
冒頭で、コレットの幼い弟が殺されるシーンを描き、彼女のその後の行動の原点けとして印象付けているところも、よく考えられています。
映画の後半、ついに明らかになるもう一人のスパイ「シャドー・ダンサー」の正体。それれは意外すぎるもの。そして、さらに驚愕のラストへ。
結末に関する細かな説明がないだけに、あれこれと考えさせられます。それによって、ただのサスペンスとしての面白さだけでなく、紛争の根深さや悲惨さも思い知らされます。
残念なのは、コレットとマックの恋愛感情らしきものが、中途半端にしか描かれないこと。あのキスシーンは不要じゃないの？
アンドレア・ライズブロー、クライヴ・オーウェンなど俳優陣も充実。なつかしの『Ｘ−ファイル』のスカリー捜査官ジリアン・アンダーソンも登場。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき）
2013年2月6日（水）マスコミ試写（京橋テアトル試写室）にて
[「し」のページ] |
|