シャニダールの花


(2012年 日本)(上映時間1時間45分)
監督:石井岳龍
出演:綾野剛、黒木華、刈谷友衣子、山下リオ、古舘寛治、伊藤歩
*テアトル新宿ほかにて公開
ホームページ http://shanidar-hana.com/
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<ストーリー>
一部の女性たちの胸に不思議な花が咲き始める。その花の成分は、新薬開発に
つながるとされ、高額で取引されていた。その花を研究するシャニダール研究
所では、植物学者の大瀧(綾野剛)とセラピストの響子(黒木華)が、提供者
である女性たちをケアしつつ、花を育てる役割を担っていた。次第に惹かれあ
う2人。しかし、花を摘み取る際に、提供者が謎の死を遂げる事故が相次ぐ。
大瀧は研究所に不信を抱くようになるのだが……。

<レビュー>
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女性の胸に咲く謎の花。ジャンルを超えた不思議な世界
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20代前半にして『狂い咲きサンダーロード』(1981)『爆裂都市 BURST CIT
Y』(1982)といった伝説的映画を生み出した石井聰亙監督。しばらく監督業か
ら離れた後、石井岳龍と改名して10年ぶりに監督したのが前作『生きてるもの
はいないのか』(2011)。それに続くのが本作です。

ひと言で言って不思議な映画です。舞台となるのは、シャニダール研究所。女
性の一部が寄生植物に寄生され、胸に不思議な美しい花が咲くようになります。
その花は新薬開発に役立つため高額で取引されます。シャニダール研究所では、
胸に芽が生えてきた女性を収容して、心身の健康を管理し、花を咲かせ、それ
を切り取ります。そこの研究員と新任の女性セラピスト、そして収容者たちを
描いたドラマです。

女性の胸に咲く不思議な花という設定は、SFやホラーのようです。研究員と
セラピスト、そして収容者も絡んだ恋愛劇の要素もあります。研究所がひた隠
す秘密をめぐるサスペンスの側面もあります。また、冒頭の恐竜絶滅の話など、
文明批評的な雰囲気もあります。しかし、そのどれでも括れない映画です。

いずれかの側面に特化すれば、もっとわかりやすい映画になったはず。しかし、
それをあえて避けている感じです。詳しい説明もありません。例えば、なぜ花
が寄生するのか、心身にどんな影響があるのかなどは、チラチラ見せるのみ。
また、セラピストの響子が抱えた悲しい過去も、さりげなく提示するだけです。

そんなこんなで、けっして観客にとって親切な映画ではありません。自分であ
れこれ考えて、自分で解釈しなければいけません。よく観れば、ツッコミどこ
ろもけっこうありそうです。

とはいえ、面白いのは面白いです。「何だ?これは」と思いつつ、最後まで目
が離せませんでした。美しく妖しい映像も魅力。特に女性たちの胸に咲く花の
映像が強烈です。途中で何度か流れる爆音のロックも印象的。主人公カップル
を演じる綾野剛、黒木華も、なんだか怪しすぎますねぇ。

いやぁ〜、何なんでしょう。この映画。不可思議としか言いようがありません。
その独特の世界にどっぷりつかってしまいました。理屈がどうのこうのではな
く感性で観る映画。たまには、こういう映画で感性を刺激されるのもいいので
は?

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(89点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
                             (田中ひろあき)

2013年7月21日(日)テアトル新宿にて。午後2時の回


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