少女は自転車にのって(WADJDA)


(2012年 サウジアラビア・ドイツ)(上映時間1時間37分)
監督・脚本:ハイファ・アル=マンスール
出演:ワアド・ムハンマド、リーム・アブドゥラ
*岩波ホールほかにて公開
ホームページ http://shoujo-jitensha.com/
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<ストーリー>
サウジアラビアの首都リヤド。10歳のおてんば少女ワジダ(ワアド・ムハンマ
ド)は、近所の男の子アブダラと自転車競争がしたくてたまらない。だが、母
親は女の子が自転車に乗ることに反対する。そんな時、学校でコーラン暗唱コ
ンテストが行われることになり、ワジダはその賞金で自転車を買おうと考える。
今まではあまり興味のなかったコーランを一生懸命に暗唱するのだが……。

<レビュー>
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少女の輝く日々を通して見えるサウジアラビアの社会
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サウジアラビアといえば、裕福な国で近代化されているイメージがありますが、
生活面ではイスラム教の厳しい戒律で、いろいろと規制が多いようです。映画
館の設置も禁止されているとか。そんな中、初の女性監督ハイファ・アル=マ
ンスールが、自国の俳優を起用し、国内で撮影したのがこの映画です。

主人公は明るくおてんばな10歳の女の子ワジダ。彼女が、幼なじみの男の子と
自転車で競走したいと思ったことがドラマの転機。「女の子が自転車なん
て!」と周囲が反対する中で、ワジダはコーラン暗唱大会で優勝して賞金で自
転車を買おうと奮闘します。

この映画には、サウジの女性をめぐる厳しい状況がたくさん登場します。女の
子が自転車に乗ることもままならないし、異性と遊ぶこともダメ。そんな中で、
ワジダは全身を覆う黒い服の下にジーンズとスニーカーを着用していたりしま
す。それが先生や親との間に、軋轢を生みます。

また、サウジは一夫多妻制で、ワジダの父親は「男の子が欲しい」といって、
別の女性と結婚するために家を出てしまいます。当然、母親は反発し悲嘆にく
れます。

そんなシビアな問題を、暗く重たく描くのではなく、1人の少女のキラキラした
日常を通して描いているのがこの映画の魅力。とにかくワジダ役のワアド・ム
ハンマドが素晴らしすぎます。とびっきりの笑顔とともに、いつもポジティブ
に前に進んでいきます。悲しいことやつらいことにもめげません。

後半、彼女がコーラン暗唱大会を目指すところは、まさに青春ストーリーその
もの。彼女の活躍ぶりに、観客も胸が踊らされます。

ラストの意外なプレゼントは、この物語の結末にピッタリ。疾走する自転車の
ワジダが、さわやかな余韻を残してくれます。

一朝一夕に世の中は変わらないし、この映画でも劇的な変化は起きません。そ
れでも、ワジダのような少女がいれば、少しずつ良い方向に向かっていきそう
な気がしてきます。

この映画はサウジの女性だけでなく、世界中の困難に直面した女性を元気づけ
るのではないでしょうか。そんな希望を感じさせる映画です。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
(93点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
                             (田中ひろあき)

2013年12月29日(日)岩波ホールにて。午後2時の回


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