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草原の椅子
（2013年 日本）（上映時間2時間19分）
監督：成島出
出演：佐藤浩市、西村雅彦、吉瀬美智子、小池栄子、AKIRA、黒木華、貞光奏風、
中村靖日、若村麻由美、井川比佐志
＊丸の内ＴＯＥＩほかにて全国公開
ホームページ http://www.sougennoisu.jp/
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＜ストーリー＞
会社員の遠間憲太郎（佐藤浩市）は妻と離婚し、大学生の娘弥生（黒木華）と
２人暮らし。ある日、取引先の社長・富樫（西村雅彦）から「親友になってく
れ」と懇願される。その一方で、独りで陶器店を切り盛りする女主人・篠原貴
志子（吉瀬美智子）と出会い、恋心が芽生える。まもなく、弥生が心を閉ざし
た４歳の圭輔を連れてきて、しばらく家で面倒を見ることになるのだが……。
＜レビュー＞
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過去の傷を負った男女による再生を描いたドラマ
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芥川賞作家・宮本輝の小説を『八日目の蝉』の成島出監督が映画化しました。
冒頭、パキスタンを旅する２人の男と１人の女、そして小さな男の子の姿が描
かれます。いったい彼らは何者で、どうしてパキスタンに行くことになったの
か。それが次第に明らかになります。
主人公はカメラメーカーに勤める遠間憲太郎という50歳の男。上からは目先の
売り上げアップを迫られ、下には冷酷な会社の方針を貫く。そんなつらい立場
です。家では妻と離婚し、大学生の娘と２人暮らし。
まもなく遠間に３つの転機が訪れます。まず取引先のカメラ店の社長・富樫の
不倫の後始末を手伝ったことをきっかけに、彼から「親友になってくれ」と頼
まれます。続いて、たまたま見かけた陶芸店の女店主・貴志子と知り合い、好
意を持ちます。さらに娘がバイト先の上司の義理の息子で虐待されていた圭輔
を連れてきて、しばらく彼の面倒を見る羽目になります。
というわけで、冒頭にパキスタンを旅していたのはこの４人です。
最初に気になったのは、不自然なセリフのオンパレード。どちらかというと、
舞台劇のように過剰で生硬で、時にはうるさいぐらいです。それが逆に不思議
なユーモアを生み出している場面もありますが、それにしても……。
ただし、それでも捨てがたい味があるのも確か。この映画は、遠間をはじめ
様々な過去の傷を負った男女による再生のドラマ。それを直線的に描くのでは
なく、エピソードを積み重ねながら、情感を込めて描いています。
やっぱり成島監督の演出がいいんですよねぇ。遠間の会社での疲れた様子や娘
とのギクシャクぶり、預かった圭輔の実母や義父とのトラブル。部下を死に追
いやった富樫の悔恨。隠していた過去に言及する貴志子の哀しみ。それぞれの
思いを丹念にすくい取っていきます。
彼らの再生のクライマックスが、パキスタン旅行。桃源郷と呼ばれるフンザの
雄大な自然の中で、それぞれの道を見出していきます。まあ、ラストの貴志子
の決断はご都合主義的ではありますが、それまでの流れからいって自然な終着
点。この映画の結末としては上々でしょう。
成島監督の演出力の確かさが再確認できた映画。誰でもその気になれば人生を
リセットできることが実感できます。これで脚本の出来がもう少し良かったら
なぁ。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2013年3月3日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時15分の回
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