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旅立ちの島唄 〜十五の春〜
（2012年 日本）（上映時間1時間54分）
監督・脚本：吉田康弘
出演：三吉彩花、大竹しのぶ、小林薫、早織、立石涼子
＊シネスイッチ銀座ほかにて公開
ホームページ http://bitters.co.jp/shimauta/
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＜ストーリー＞
沖縄の離島、南大東島に住む中学生の仲里優奈（三吉彩花）は、島の民謡グ
ループ「ボロジノ娘」のリーダーを務める。島には高校がないので、１年後に
は進学のために島を出る予定の優奈。すでに兄と姉は島を出て、母（大竹しの
ぶ）は沖縄本島に渡って戻ってこないため、父（小林薫）と２人で暮らしてい
たのだが……。
＜レビュー＞
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離島の少女の成長と家族の姿を自然に描く
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沖縄の離島、南大東島というところでは、島に高校がないため、進学する子は1
5歳で島を出なければならないそうです。それで、そのまんま島に戻らないケー
スも多いとか。そんな南大東島に住む少女と、その家族を描いたドラマです。
ドラマのスタートは、主人公・仲里優奈の１年先輩の卒業時期。先輩から島の
民謡グループ「ボロジノ娘」のリーダーを託された優奈ですが、彼女も１年後
には島を出なければなりません。そこから１年間に彼女に起きる出来事が描か
れます。
すでに兄と姉は島を出て、母も沖縄本島に渡ったままの仲里家。そのため優奈
はさとうきび農家を営む父と２人で暮らしています。そんな中、別の島に住む
男の子に恋する優奈ですが、そこには離島ゆえの障壁が立ちはだかります。ま
た、島を離れていた姉は夫と不仲になったらしく、子供とともに島に戻ってき
ます。一方、優奈は母に恋人がいることを知って衝撃を受けます。
沖縄といえば、豊かな大自然、のどかな風土など明るい側面ばかりが強調され
ますが、ここで描かれるのは少し違う世界。壊れかけた家族の中で、優奈の心
は激しく揺れ動きます。
ただし、それを劇的に描くのではなく、ゆったりとした空気感の中で淡々と、
ごく自然に描いているのがこの映画の特徴。最近の映画は、凝り過ぎなぐらい
に映像に凝った作品が多いけれど、この映画は正反対。ひたすらオーソドック
スに、ていねいに描写していきます（監督・脚本は井筒和幸監督の『ヒーロー
ショー』『黄金を抱いて翔べ』の脚本を手がけた吉田康弘）。
これだけオーソドックスな映画だと、たいてい途中で飽きたりするものですが、
この映画に関してはそれはありませんでした。何よりも、様々な困難に見舞わ
れながらも、必死に顔を上げて前進しようとする優奈の姿が心に響くからです。
また、崩壊しかけた家族ながら、それでも何とか優奈を支えようとする父や母
の姿も、観客の心を動かします。
優奈が島唄のグループのリーダーということで、島唄も効果的に使われていま
す。特にラスト近くのライブは圧巻。
主演の三吉彩花の好演が光ります。大竹しのぶ、小林薫といったベテランを相
手に、等身大のみずみずしい演技を披露。『グッモーエビアン!』でも、能年玲
奈などとともに存在感を見せていましたが、今回はさらに輝いています。
１人の少女の成長を通して、家族とは何かを問い、さらに離島の現実を突きつ
けた映画。観終わって温かな気持ちになれました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2013年5月26日（日）シネスイッチ銀座にて。午後1時25分の回
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