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天使の分け前（THE ANGELS' SHARE）
（2012年 イギリス・フランス・ベルギー・イタリア）（上映時間1時間41分）
監督：ケン・ローチ
出演：ポール・ブラニガン、ジョン・ヘンショウ、ガリー・メイトランド、ウ
ィリアム・ルアン、ジャスミン・リギンズ、ロジャー・アラム、シヴォーン・
ライリー、チャーリー・マクリーン
＊銀座テアトルシネマほかにて公開
ホームページ http://tenshi-wakemae.jp/
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＜ストーリー＞
スコットランドのグラスゴー。劣悪な環境で育ち荒れた生活を送る青年ロビー
（ポール・ブラニガン）は暴力事件を起こし、裁判所から社会奉仕活動を命じ
られる。恋人が出産して父親となったことから、心を入れ替えようとするロ
ビー。だが、周囲の環境が彼を追い詰める。そんな中、ロビーは社会奉仕の指
導にあたるウィスキー愛好家の男ハリー（ジョン・ヘンショウ）と知り合う。
ハリーからウィスキーの奥深さを学び、"テイスティング"の才能に目覚めるロ
ビーだったが……。
＜レビュー＞
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温かくユーモラスな若者の生き直しのドラマ
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名匠ケン・ローチ監督の映画。ローチ監督といえば、『ケス』『麦の穂をゆら
す風』などの社会派監督として有名でしたが、サッカーの元スーパースターを
ネタにした『エリックを探して』ではコミカルなタッチを導入。今回も、その
系統の映画になっています。
スコットランド・グラスゴーに住むロビーは荒れた暮らしを送り、少年刑務所
を出たものの、また暴力事件を起こします。今回はどうにか刑務所行きは免れ
るものの、社会奉仕活動を命じられ、そこで指導者のハリーや同じ境遇の若者
たちと知り合います。恋人レオニーと誕生した赤ん坊のために、人生を立て直
そうとするロビーですが、なかなか思うようにいきません。
深刻な失業問題などを背景に、底辺の人々に焦点を当てているのはいかにも
ローチ監督らしいところ。中盤でロビーが加害者となった事件で被害者と対峙
させるあたりも、社会的テーマを忘れない姿勢が明確です。
しかし、そうした社会的テーマを前面に出すのではなく、あくまでも主人公ロ
ビーの生き直しのドラマとして、ユーモアを交えつつ描いているのがこの映画
の魅力。
ドラマの転機となるのはスコッチウィスキー。ロビーが参加した社会奉仕活動
の指導員のハリーがウィスキー愛好家で、彼の影響によって奥深いウィスキー
の世界を知るロビー。ロビーとハリーの関係がごく自然でベトベトしていない
のが印象的です。
とはいえ、そのまま素直にロビーがウィスキーの世界にはまるわけではありま
せん。生き直そうとしたものの、うまくいかない彼は、仲間とともに大勝負に
出ます。
それはタイトルにある「天使の分け前」（樽の中から自然に蒸発するウィス
キー）に引っかけた心憎い仕掛け。おまけにターゲットになるのが、ウィス
キーのオークションに大金を投じる金持ちなので痛快です。観ているうちに、
ロビーたちを応援したくなりました。
その大勝負の過程で、ロビーたちにキルトの衣装を着せたりして、珍道中を繰
り広げさせているのも楽しいところ。
観終ってポジティブで温かな気持ちになれること間違いなし！ 高級なウィス
キーのような豊かな余韻の残る映画です（飲んだことないけど）。
ちなみに、この映画。5月末で閉館になる銀座テアトルシネマのクロージング作
品。それにふさわしいステキな映画でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2013年5月9日（木）銀座テアトルシネマにて。午後12時25分の回
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