ゼロ・ダーク・サーティ(ZERO DARK THIRTY)


(2012年 アメリカ)(上映時間2時間38分)
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェシカ・チャステイン、ジェイソン・クラーク、ジョエル・エドガー
トン、ジェニファー・イーリー、マーク・ストロング
*TOHOシネマズ有楽座ほかにて公開
ホームページ http://zdt.gaga.ne.jp/
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<ストーリー>
9・11テロ後、CIAは巨額の予算をつぎ込みビンラディンを追うが、何の手がか
りも得られなかった。そんな中、CIAのパキスタン支局に若い女性分析官のマヤ
(ジェシカ・チャステイン)が派遣される。拷問のような取り調べに戸惑いを
見せるマヤ。捜査は困難を極め、その間にもマヤの同僚ジェシカをはじめ多く
の命がテロで失われていく。やがて、マヤはビンラディンにつながると思われ
るアブ・アフメドという男の存在をつかむが……。

<レビュー>
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歴史的な暗殺をひたすらリアルに描く重たい映画
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キャスリン・ビグロー監督の映画はやっかいです。明確な主張を打ち出さない
ので、人によってどうにでも解釈できます。例えば、アカデミー作品賞などを
獲得した前作『ハート・ロッカー』も、アメリカ兵賛美の映画にも、反戦映画
にも解釈が可能。

オサマ・ビンラディン暗殺をめぐる舞台裏を描いたこの作品も、明確な主張は
打ち出しません。

物語の中心は、若い女性のCIA分析官がビンラディンの行方を突き止めるという
お話。最初は拷問のような取り調べを嫌悪していた彼女が、テロが続いて仲間
も失う中で、どんどんビンラディン探しに没頭し、執念で追い詰めていきます。

相変わらずリアルでスリリングな世界を生みだすビグロー監督。映像の力に圧
倒されます。イスラム過激派によるテロ、拷問や盗聴などのアメリカの汚いや
り口、敵味方など関係なくできるだけ「何が起きたか?」を明らかにしようと
する姿勢は一貫しています。クライマックスの暗殺シーンも破格のスリル。主
人公役のジェシカ・チャステインの熱演も見事です。

まあ、単純に考えても、「米海軍特殊部隊がビンラディンを暗殺した!」とい
う事実は知っていても、そこに至るまでに何があったのかを知っている人は少
ないはず。しかも、そこで重要な役割を果たしていたのが、若い女性というの
ですから面白くないはずがないです。あまりにも重たい映画ですが、一見の価
値はあります。

さてさて、この映画には様々な側面があります。冒頭の拷問場面を見ればアメ
リカ批判にもとれます。最初は良心を見せていた主人公がやがて遮二無二敵を
追い詰める変貌ぶりからは、戦争(テロとの戦い)の恐ろしさを炙りだしてい
るようにも思えます。

あるいは「アメリカがついに憎きテロリストを倒した」という展開に着目すれ
ば、アメリカ万歳映画にも解釈できます。巨額の予算を使って無駄な時間を費
やした官僚主義を批判しているような側面も見えます。

いったいこの映画から何を読み取るか?それは観客次第なのです。

個人的に思うのですが、ビンラディンを倒してもテロの恐怖は相変わらず。ア
メリカのやったことって何だったんだ?ラストの主人公の複雑すぎる表情がす
べてを物語っているのかも。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
(92点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2013年2月17日(日)新宿バルト9にて。午後2時10分の回


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