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百円の恋
（2014年 日本）（上映時間1時間53分）
監督：武正晴
出演：安藤サクラ、新井浩文、稲川実代子、早織、宇野祥平、坂田聡、沖田裕
樹、吉村界人、松浦慎一郎、伊藤洋三郎、重松収、根岸季江
＊テアトル新宿ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://100yen-koi.jp/
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＜ストーリー＞
弁当屋を営む実家に引きこもり、自堕落な日々を送る32歳の一子（安藤サク
ラ）。だが、離婚して子連れで出戻った妹と大喧嘩して家を飛び出し、アパー
ト暮らしを始める。仕方なく100円ショップで深夜のバイトを始めた一子は、引
退間近の中年ボクサー・狩野（新井浩文）に恋をする。やがて自分もボクシン
グを始める一子だったが……。
＜レビュー＞
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安藤サクラの渾身の演技が光るボクシング映画
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安藤サクラを初めて見た時には、その存在感に驚いたものですが、今やますま
すその存在感が増しています。
彼女が演じるこのドラマの主人公・一子は、弁当屋を営む実家に寄生し、自堕
落な日々を送っています。しかし、妹と大喧嘩したことがきっかけで、一人暮
らしを余儀なくされ、百円ショップのバイトで食いつなぎます。そして、風変
わりな中年ボクサーと知り合ったことから、自分もボクシングにのめり込むよ
うになります。
脚本は、松田優作の出身地で開催されている映画祭で「松田優作賞」を受賞し
たそうです。しかし、ストーリー自体はよくあるスポ根ものの陳腐すぎるお話
です。それでは、映画自体もつまらないかといえば、そんなことはありません。
この映画が面白くなった理由は、登場人物のキャラ設定と絶妙の配役にありま
す。主人公の一子は自堕落なだけでなく、無口で何を考えているかわからない
女。毎日がダメダメで、あまりにも痛すぎるキャラです。
そして、彼女が恋する中年ボクサーの狩野もヘンな男。無口で無愛想で、こっ
ちもダメダメです。そんな２人のシーンは独特な雰囲気に包まれていて、つい
クスクスと笑ってしまいます。
一子が働く百円ショップの人たちなど、その他の人物も個性的なキャラばかり
で、ドラマに効果的なスパイスを加えます。
そして何よりも、安藤サクラ、新井浩文の配役がハマりすぎています。この２
人でなければ、こんなに面白い映画にはならなかったでしょう。特に安藤サク
ラは、ジャージ姿でゲームに興じる冒頭から、すさまじい存在感です。
そして、彼女のスゴさがさらに際立つのが中盤以降。一子は狩野に恋をしてボ
クシングを始めますが、それが本格化するのは怒りから。ある出来事が彼女を
ボクシングに没入させます。それとともに一子は、見る見る間に変わっていき
ます。冒頭とは似ても似つかないシェイプアップされた肉体。あんなに鈍かっ
た動きもスピーディーに一変します。
クライマックスはスポ根ものの定番らしい試合シーン。しかし、そんな定番の
枠を超える迫力満点で壮絶で、なおかつ美しいシーンで、つい引き込まれてし
まいました。わざとらしさのないラストも余韻が残ります。
演出もテンポが良いし、誰でも楽しめそうなドラマ。まあとにかく安藤サクラ
の渾身の演技だけでも、観る価値のある映画だと思いますね。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2014年12月27日（土）テアトル新宿にて。午後2時20分の回
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