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ぼくたちの家族
（2013年 日本）（上映時間1時間57分）
監督・脚本：石井裕也
出演：妻夫木聡、原田美枝子、池松壮亮、長塚京三、黒川芽以、ユースケ・サ
ンタマリア、鶴見辰吾、板谷由夏、市川実日子
＊新宿ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://bokutachi-kazoku.com/
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＜ストーリー＞
郊外の一軒家に暮らす若菜克明（長塚京三）と妻の玲子（原田美枝子）。２人
には、離れて暮らす会社員の長男・浩介（妻夫木聡）と、大学生の次男・俊平
（池松壮亮）がいた。浩介の妻が妊娠し、喜ぶ克明と玲子。だが、まもなく玲
子が脳腫瘍で余命１週間と診断されてしまう。どうしていいかわからずうろた
える克明と浩介に対して、平静を装う俊平。そんな中、母の借金や父の事業の
不振で、一家が存亡の危機にあることが明らかになる……。
＜レビュー＞
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病に倒れた母と家族の心理を繊細に写し取る
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『川の底からこんにちは』や『あぜ道のダンディ』を観た時には、「石井裕也
監督って、面白いけど、かなり変わっているな」と思ったものですが、前作
『舟を編む』で完全に正統派の監督になりましたね（正統派ってよくわかんな
いけど）。
今回の映画も素材はごく真っ当です。様々な問題を抱えた家族が、母の余命宣
告を機に再生する物語。早見和真の小説が原作だそうです。
舞台となる若菜家は、自分で事業を営む父の克明、専業主婦の玲子、すでに結
婚して離れて暮らす会社員の長男・浩介と、大学生で一人暮らしながら親のす
ねをかじっている次男・俊平という顔ぶれ。
浩介の妻が妊娠したと知り、初孫だと喜ぶ克明と玲子。ところが、そのお祝い
の席で玲子がおかしな態度だったため病院に行くと、脳腫瘍で余命一週間と診
断されてしまいます。
そこからは、家族の様々な問題が露見。玲子はサラ金に多額の借金があり、克
明の事業は不振で若菜家は経済的に破たん状態にあることがわかります。また、
浩介がどうも妻とうまくいっていないことも明らかになります。はたして、そ
んな若菜家はどこに向かうのか？
いわゆる「難病もの」といえば、涙腺をダイレクトに刺激するドラマを想像し
ますが、石井監督はそんな常識を封印。玲子の病気を知り、その闘病をサポー
トする家族それぞれの揺れ動く心理を、繊細に写し取ることに力を注ぎます。
戸惑い、強がり、苦悩、そして希望。
家族４人のキャラが際立っているのも特徴。病気のせいもあり天真爛漫にふる
まう玲子、おろおろして息子に頼りっきりの克明、一家を背負う悲壮な覚悟の
浩介、ノーテンキなようでいて意外に頼りになる俊平。彼らがぶつかり合うこ
とで、リアルで自然なドラマが生まれます。
それを可能にするのは、役者たちの演技。原田美枝子、長塚京三というベテラ
ンの名優、実力派の妻夫木聡、注目の若手の池松壮亮。彼らの演技力と石井監
督の演出力が上質のハーモニーを奏でています。
４人の周辺事情についてはそんなに深い突っ込みはなく、イマイチ理解しにく
いところもあります。また、途中であまり意味のない人物が登場したりします。
でも、それはご愛嬌でしょう。
ラストは、浩介の妻も加わって家族が再生へと向かいます。考えようによって
はお気楽な展開にも思えますが、そこに至るまでの人物心理がきちんと描かれ
ているので納得してしまいます。誰でもほっこりと温かな余韻で劇場を後にで
きるはず。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2014年5月24日（土）シネマ・ロサにて。午後1時の回
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