チョコレートドーナツ(ANY DAY NOW)


(2012年 アメリカ)(上映時間1時間37分)
監督・脚本:トラヴィス・ファイン
出演:アラン・カミング、ギャレット・ディラハント、アイザック・レイヴァ、
フランシス・フィッシャー、グレッグ・ヘンリー
*シネスイッチ銀座ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.bitters.co.jp/choco/
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<ストーリー>
1979年。ゲイのルディ(アラン・カミング)はシンガーを夢見ながらも、口パ
クで踊るショーダンサーとして働いていた。ある日、ルディは検事局の弁護士
ポール(ギャレット・ディラハント)と出会い、2人は恋に落ちる。そんな中、
ルディはアパートの隣に暮らすダウン症の少年、マルコ(アイザック・レイヴ
ァ)の存在を知る。彼の母親は薬物依存症で、まもなく逮捕されてしまう。施
設に送られるマルコを見かねたルディは、ポールとともに彼を引き取り、面倒
を見るのだが……。

<レビュー>
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ゲイのカップルとダウン症の少年。疑似家族のきらめきと悲劇
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ヒットしていると聞くと、「本当にそんなに良い映画なの?」と懐疑的になっ
てしまう私ですが、この映画は間違いなく良くできた映画です。1970年代のア
メリカを舞台に、ゲイのカップルと親に見放されたダウン症の少年と一つの家
庭を築くという実話をもとにした作品。

主人公はゲイバーで踊るダンサーの男ルディ。口パクで踊っているものの、本
当はシンガーになる夢を持っています。そんな彼が検事局で働く弁護士のポー
ルと知り合い、恋愛関係になります。そして、ほぼ同時期にルディは隣の部屋
に住むダウン症の少年マルコと知り合います。彼の母親は薬物依存でまともに
育児もせず、ついに逮捕されてしまいます。かわいそうに思ったルディは、
ポールの協力でマルコの面倒を見るのですが……。

ゲイであるがために過去につらい経験をしたらしいルディ。正義を実現するた
めに弁護士になったのに、自分がゲイであることを隠して生きるポール。そし
て母親に顧みられない一人ぼっちのマルコ。孤独な3つの魂が自然に寄り添い、
疑似家族(といっても、ある意味本当の家族以上に家族らしい)を形成するよ
うすが、ごく自然に描かれます。問題や悩みを抱えつつも、キラキラと輝く3
人の幸せな日々が、的確にスクリーンに焼き付けられていきます。

しかし、まだ同性愛への偏見が強かった時代。それが前面に出てくるのが後半
の裁判シーン。あることからマルコと引き離されたルディとポールは、裁判で
彼を取り戻そうとします。しかし、そこは偏見と権謀術数が渦巻く世界。ルデ
ィとポールはその渦に巻き込まれていきます。

というのが全体のドラマの構成。差別に対する怒りを根底に起きつつも、それ
を真正面から告発するのではなく、一つの家族の人間ドラマとして描いている
のが大きな特長です。説教臭さはまったくありません。

そうかといって、感動の涙を押し売りしているわけでもありません。涙の出そ
うな場面をあえてサラッと流したりします。それがよけいに感動を呼んでしま
うわけです。まあ、とにかく、そのへんのバランス感覚が絶妙なんですよ。

そして、この映画のもう一つの大きな特長が、音楽を効果的に使っているとこ
ろ。特に、主演のアラン・カミングの歌が、ドラマにピッタリ。彼の心情をそ
のまま表現するとともに、観客に対するメッセージになっています。

実は、ラストはかなりの悲劇なのですが、そこもウェットに走らず、アランが
歌う「アイ・シャル・ビー・リリースト」(ホブ・ディランの名曲)によって、
観客に大きな余韻を残してくれます。

これといってケチのつけようがない完成度の高い作品。観客を感動させるとい
う点では、近年でも上位に入る映画だと思います。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
(93点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2014年5月23日(金)シネマカリテにて。午後4時15分の回


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