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誰よりも狙われた男（A MOST WANTED MAN）
（2013年 アメリカ・イギリス・ドイツ）（上映時間2時間2分）
監督：アントン・コービン
出演：フィリップ・シーモア・ホフマン、レイチェル・マクアダムス、ウィレム・デフォー、ロビン・ライト、グリゴリー・ドブリギン、ホマユン・エルシャディ、ニーナ・ホス、ダニエル・ブリュール
＊TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
ホームページ http://nerawareta-otoko.jp/
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＜ストーリー＞
ドイツのハンブルク。テロ対策チームは、イスラム過激派とされるチェチェン人の青年イッサ・カルポフが密入国したことを知り、監視を始める。チームを率いるギュンター・バッハマン（フィリップ・シーモア・ホフマン）は、彼を泳がせてさらなる大物を狙おうとしていた。イッサは人権団体の若手女性弁護士アナベル・リヒター（レイチェル・マクアダムス）を介して銀行家のトミー・ブルー（ウィレム・デフォー）と接触を図る。そんななか、ＣＩＡが介入してくる……。
＜レビュー＞
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今の時代を反映したスリリングで哀愁漂うスパイ映画
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ジョン・ル・カレの小説が原作のスパイ映画。ジョン・ル・カレといえばスパイ小説の大家で、最近では『裏切りのサーカス』が映画化されましたね。
スパイ映画とはいうものの、ド派手なアクションやわかりやすい正義と悪の対決などはありません。9.11以降の社会を反映した重苦しく、沈鬱な映画です。
舞台はドイツのハンブルグ。イスラム過激派と見られる一人の青年イッサが密入国してくるのが事件の発端。バッハマン率いるテロ対策チームは、彼を監視し始めます。ただし、すぐに捕まえるわけではありません。彼を泳がせて、さらに大物に迫ろうというのです。
イッサは人権団体の女性弁護士アナベルを介して、ブルーという銀行家と接触します。それを利用して、バッハマンたちはいよいよ黒幕に迫ろうとするのですが……。
このドラマの背景にあるのは、２つのスパイの潮流の対決。バッハマンは情報屋を巧みに使い、小物を味方に引き込んで、大物を追い詰めようとします。アナベルもブルーも、硬軟取り混ぜた彼の戦術に取り込まれ、味方に引き込まれます。その手練手管はまるで職人技のよう。しかし、同時にそれは昔ながらのスパイ戦術です。
それに対して、ＣＩＡを代表とする最近のスパイは、テロの温床になりそうなものは根こそぎ力で叩き潰します。バッハマンのようなやり方は生ぬるい時代遅れの方法だといわんばかりです。
そんな対立を背景にしたことによって、ドラマは俄然スリリングで、緊迫感を増します。嘘や裏切り、脅迫や懐柔といったスパイ映画の常道といえる要素も、一段と輝きを増してくるのです。そして、そこには時代に取り残されつつあるスパイの哀切までが漂っています。
バッハマンを演じたのは、この映画を最後に急死したフィリップ・シーモア・ホフマン。彼がいかにスゴイ役者だったかがわかります。やり手のスパイのすごみ、過去の事件で負った心の傷、時折見せる人間味など、様々な顔を見せてくれます。それを大げさに表現するならどうってことないのですが、抑制的な同じテンションの演技で表現するからスゴイんですよねぇ〜。こういう役者はめったにいません。つくづく惜しい役者を亡くしました。
特にラストの衝撃的な展開の中の彼の演技は、後世に残りそうな名演技。あの悲痛な叫びがいつまでも耳から離れません。
彼の演技だけでも、絶対に観る価値のある素晴らしい映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（94点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2014年10月17日（金）新宿武蔵野館にて。午後1時の回
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