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フルートベール駅で（FRUITVALE STATION）
（2013年 アメリカ）（上映時間1時間25分）
監督・脚本：ライアン・クーグラー
出演：マイケル・Ｂ・ジョーダン、メロニー・ディアス、オクタヴィア・スペ
ンサー、ケヴィン・デュランド、チャド・マイケル・マーレイ、アナ・オライ
リー
＊新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開
ホームページ http://fruitvale-movie.com/
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＜ストーリー＞
22歳のオスカー・グラント（マイケル・Ｂ・ジョーダン）は、恋人ソフィーナ
（メロニー・ディアス）と幼い娘とともにサンフランシスコで暮らしていた。2
008年12月31日、ちょうど母親の誕生日でお祝いの電話を入れるオスカー。かつ
ては刑務所にも入った彼だったが、今度こそ良き夫、良き父親になろうと努力
していた。だが、やがて衝撃的な出来事が起きる……。
＜レビュー＞
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射殺された黒人青年の最後の一日を描く
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2009年1月1日未明、カリフォルニア州オークランドの地下鉄フルートベール駅
で、黒人青年が白人警官に射殺される事件が起きました。その実話をもとにし
た映画です。
冒頭に登場するのは、事件当時、目撃者が動画撮影した実際の映像。それを見
ると殺された青年は完全に無防備。どう考えても理不尽な銃撃です。
その後に描かれるのは、被害者の青年オスカーの最後の1日のドラマ。ちょうど
その日は大晦日です。
オスカーはけっして立派な人間ではありません。刑務所に服役していたことも
あります。しかし、ガールフレンドと幼い娘のために、必死に生き直そうとし
ています。仕事をクビになったりして、うまくいかないことも多いけれど、密
売用に持っていたヤクを捨てるなど、出直しの覚悟は変わりません。
大晦日は彼の母の誕生日でもあります。お祝いの電話をして、誕生パーティー
用の食材を買い、メッセージカードを用意します。昔、オスカーがワルだった
時には仲違いしたこともありますが、今はとっても良い関係です。そんな母と、
恋人、娘のためにオスカーは今度こそ立ち直ろうとしているわけです。
手持ちカメラを使ってドキュメンタリータッチで、オスカーや家族の姿を静か
に、そしてリアルに描写。それは、どこにでもありそうな光景です。
そして、事件が起きます。母の誕生パーティーが終わって、新年を祝うために
街に繰り出すオスカーや恋人、仲間たち。母のアドバイスで電車で出かけます
が、それが仇となってしまいます。電車の中でカウントダウンをして新年を迎
えた後で、ちょっとしたトラブルが起き警官がやってきます。
冒頭の事件の様子が、今度はドラマで描かれます。何ともショッキングで重た
いシーンです。
観終わって悲しさと切なさがこみ上げてきました。殺される少し前、オスカー
は街でたまたま会った白人の男から「自分も貧乏だったが、今は起業している。
何かあったら連絡してくれ」と名刺を渡されます。もしかしたら、オスカーに
は幸せな前途が待ち受けていたのかもしれません。それが一発の銃弾で奪われ
てしまったのです。
声高なメッセージを叫ばず、被害者の1日を抑制的に描いたことで、よけいに人
種差別の恐ろしさや無意味さが伝わってくる映画です。『大統領の執事の涙』
『それでも夜が明ける』と黒人監督による人種差別をテーマにした映画の公開
が続きましたが、衝撃度という点ではこの映画が一番かもしれません。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2014年3月26日（水）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後1時35分の回
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