複製された男(ENEMY)


(2013年 カナダ・スペイン)(上映時間1時間30分)
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベ
ラ・ロッセリーニ、ジョシュア・ピース、ティム・ポスト、ケダー・ブラウン
*TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
ホームページ http://fukusei-movie.com/
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<ストーリー>
大学の歴史講師アダム(ジェイク・ギレンホール)が、同僚から勧められた映
画を鑑賞していると、自分と瓜二つの俳優が出演しているのを発見する。あま
りに似すぎていることから、その俳優・アンソニーのことを調べ始めるアダム。
やがて2人は対面するが、彼らは服装以外のすべてが一緒だった。お互いの恋
人と妻をも巻き込みながら、2人の運命は思わぬ方向へと向かっていく……。

<レビュー>
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自分にそっくりのもう一人の男。不条理で謎だらけの映画
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世の中には、自分にそっくりの人間がいるというのはよく聞く話。しかし、そ
れが完全に一致するとなれば、それはもはや現実にはありえないお話です。そ
のありえない設定を使って、現実世界に生きる観客に向かって様々な問いを投
げかける問題作です。

主人公の大学講師のアダムは、ある日、知人から勧められた映画を観ていて、
そこに自分そっくりの役者が脇役として出演していることを知ります。あまり
に似ているため色々調べ、ついにアダムはアンソニーという役者と対面します
が、そこからお互いの妻や恋人を巻き込んで、とんでもない方向に事態が進ん
でいきます。

冒頭に流れる街の映像から、怪しく危険な雰囲気が満ち満ちています。続いて
登場する謎のイベント。裸の女性、それを見守る観客、そしてクモ???

なんじゃ、こりゃあ〜!と叫びたくなるようなオープニングです。ヒュー・ジ
ャックマンとジェイク・ギレンホールが共演した前作『プリズナーズ』もそう
でしたが、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は本当に雰囲気のつくり方がうまい!映
像がキレまくっています。

最初の怪しさと危なさは、ドラマが進行してもまったく失速せず。最後までス
クリーンに引きつけられます。2人の男がそっくりなのはなぜなのか?その背
景には何があるのか?ドラマの進行とともに謎がますます大きくなっていきま
す。主演(もちろん二役)のジェイク・ギレンホールやメラニー・ロランなど、
役者たちの演技も怪しすぎます。

いえいえ、それだけではなく、この映画のジャンルさえ不明です。SF?サス
ペンス?犯罪映画?それとも人間ドラマ?

そして、やがて待ち受ける驚愕のラスト。え!え!え!何ですか、これは?

『プリズナーズ』が、ストーリー的にはわかりやすい犯罪サスペンスだったの
で、今回もそういう映画だと思って観たら大間違い。謎は最後まで解明されま
せん。不条理すぎる世界です。まったくスッキリしません。しかし、それが逆
に心を捉えて離しません。

それもそのはず、この映画の原作はノーベル賞作家ジョゼ・サラマーゴの小説。
エンタメではなく純文学。うーむ、確かに何やら奥が深そう。現代社会におけ
るアイデンティティの喪失など、色々なテーマが秘められている映画のようで
す。

ブルーベリーとか、謎のカギとか、ヒントはあっちこっちに散りばめられてい
ます。それを自分なりに解釈して楽しむのが正解だと思います。くれぐれも、
エンタメ映画のようなスッキリ感は期待しないこと。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(87点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
                            (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2014年7月20日(土)TOHOシネマズ シャンテにて。午後1時50分の回


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