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イロイロ ぬくもりの記憶（ILO ILO）
（2013年 シンガポール）（上映時間1時間39分）
監督・脚本：アンソニー・チェン
出演：コー・ジャールー、アンジェリ・バヤニ、ヤオ・ヤンヤン、チェン・テ
ィエンウェン
＊新宿K's cinema ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://iloilo-movie.com/
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＜ストーリー＞
共働きの両親と暮らす一人っ子のジャールー（コー・ジャールー）。わがまま
で、小学校でもたびたび問題を起こす彼に手を焼いた母親は、フィリピン人の
テレサ（アンジェリ・バヤニ）をメイドとして雇う。最初はテレサの言うこと
を聞かず、彼女を困らせるジャールーだったが、少しずつ心を開いていくよう
になる……。
＜レビュー＞
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少年とメイドの交流を淡々と、そしてみずみずしく
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カンヌ国際映画祭で新人賞にあたるカメラ・ドールを受賞したシンガポール映
画。わがままな少年とフィリピン人メイドの交流を描いたドラマです。去年の
東京フィルメックスでも上映されて、筆者も鑑賞して良い映画だと思ったので
すが、字幕がよく読めなかったので劇場で再チェックしました。
シンガポールの集合住宅に住む一家。夫は営業マン。妻は運送会社の事務員で
妊娠中。そして、一人息子はわがままな小学生。彼に手を焼いた母親はフィリ
ピン人の出稼ぎ労働者をメイドとして雇います。最初はわがまま放題の息子で
すが、やがて少しずつ心を開いていきます。
少年とメイドの絆のドラマとはいえ、涙ウルウルのストレートな感動物語では
ありません。描写は淡々としていて、押しつけがましいところはまったくあり
ません。しかし、それがよけいに観客の胸をじわじわと侵食していきます。
少年とメイド、両親などの感情がみずみずしく描かれています。ほんのちょっ
としたエピソードを積み重ねて、心の変化を見せていくあたりも見事です。ク
スクスと笑えるところもあちこちに用意されていて、とても奥行きのある作品
です。
２人が絆を深める背景として、メイドが故郷に幼い子供を残してきている設定
にしたり、両親の厳しい仕事環境を効果的に使うところも印象的。
ドラマ的に大きな転機は、父親の失業。それをきっかけに、一家とメイドの運
命は大きく変わっていきます。
そして、この映画のもう一つの素晴らしいところは、シンガポールの社会問題
を巧みに織り込んでいるところ。舞台となった90年代の金融危機をはじめ、経
済格差や人種差別など、様々な場面が背景として描かれます。多民族国家ゆえ、
規律で縛ろうとするシンガポールのお国柄も見えてきます。けっして声高に何
かを叫んでいるわけではありませんが、観客には確実に伝わるはずです。
ラストはこの映画らしい場面。大感動のエンディングになりそうな場面ですが、
あえてそうはしません、淡々とさりげなく描くことによって、かえって余韻の
残る、心にしみるエンディングになっています。
この映画が長編デビューのアンソニー・チェン監督の現実に対する厳しい目と、
人間に対する温かな視線が同時に感じられます。とっても後味が良い映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2014年12月14日（日） 新宿K's cinemaにて。午後2時35分の回
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