メビウス(MOEBIUS)


(2013年 韓国)(上映時間1時間23分)
監督・製作総指揮・脚本・撮影・編集:キム・ギドク
出演:チョ・ジェヒョン、ソ・ヨンジュ、イ・ウヌ
*新宿シネマカリテほかにて全国公開
ホームページ http://moebius-movie.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

<ストーリー>
父(チョ・ジェヒョン)と母(イ・ウヌ)と思春期の息子(ソ・ヨンジュ)の
家族。夫には愛人(イ・ウヌ)がいて、それを知った妻は嫉妬に狂う。妻は夫
の性器を切り取ろうとするが失敗し、今度は息子の性器を切断してしまう。妻
はそのまま家を出て行き、父と息子は取り残されるが……。

<レビュー>
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
性的側面から家族を描くキム・ギドクの問題作
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

韓国の鬼才キム・ギドク監督の作品。キム監督は、脚本を担当した映画はそれ
なりにエンタメ性もあるのですが(最近では『レッド・ファミリー』のよう
に)、自ら監督した映画はかなり過激です。

今回は家族のお話。夫の不倫に苦しむ妻が、嫉妬に狂って夫の性器を切り取ろ
うとします。しかし、失敗すると今度は息子の性器を切り取ります。妻は出て
行き、夫は自責の念からあろうことか自分の性器も切除し、性器なしでも快楽
を得られる方法を探して、息子に伝授します。

当然ながらキム・ギドク監督は、大真面目で撮っています。テーマはズバリ、
家族における性の問題。男と女の性的関係をベースに成り立つ家族だけに、性
的側面から家族を描こうとする意図は理解できます。劇中に仏像が登場するこ
とからも、人間の深い業を追求しようという監督の意図が見えます。

しかし、私にはこの映画がホラー・コメディにしか見えないのですよ。そもそ
も妻がなんで息子の性器を切り取るのか理解不能。夫が息子に、快楽を得る方
法として自傷行為を伝授するに至っては、謎というより、もはや笑うしかあり
ません。

その後も夫の浮気相手が、男の肩にナイフを突き立てて快楽を与えるシーンな
ど、爆笑シーンの連続です。強烈なシーンばかりで、人間の業とかいう以前に
笑っちゃうしかないんですよね。

この映画にはセリフがありません。そりゃそうでしょ。「父ちゃんがチンチン
なしでも気持ち良くなる方法を見つけたぞ、それは自傷行為だぁ〜!」とかセ
リフで言ったら、ただのB級、いやC級コメディーになっちゃいますもんね。

ホラー的な要素としては、何といっても妻と愛人の壮絶な演技が見もの。どっ
ちもイ・ウヌという女優が1人で演じているのですが、息子の性器を切り取っ
た後の表情なんて、背筋ゾクゾクものですぜ。

というわけで、監督の意図とはまったく違うところで、ホラー・コメディ―と
して楽しめた作品。結果的に楽しかったから、まあいいか。

今後も、問題作を撮り続けそうなキム・ギドク監督。ですが、個人的には脚本
のほうに期待してますので。ヨロシク。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
(78点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★☆☆☆
                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2014年12月29日(月)新宿シネマカリテにて。午前11時45分の回


[「め」のページ]