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さよなら、アドルフ（LORE）
（2012年 オーストラリア・ドイツ・イギリス）（上映時間1時間49分）
監督・脚本：ケイト・ショートランド
出演：ザスキア・ローゼンダール、カイ・マリーナ、ネーレ・トゥレプス、ウ
ルシーナ・ラルディ、ハンス＝ヨヘン・ヴァークナー、ミカ・ザイデル、アン
ドレ・フリート、イーファ＝マリア・ハーゲン
＊シネスイッチ銀座ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.sayonara-adolf.com/
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＜ストーリー＞
1945年、春。ナチス親衛隊の高官を父に持つ14歳の少女ローレ（ザスキア・
ローゼンダール）。ヒトラーが亡くなり、両親は連合軍に拘束され、彼女は幼
い４人の弟妹たちを連れて遥か900キロも離れた祖母の家を目指す。ところが、
敗戦を境に世間の風向きは一変し、ローレたちは行く先々で冷たい仕打ちにあ
う。そんな中、ナチスの残虐な行為を知り衝撃を受けるローレ。彼女を助けて
くれたのは、偶然出会ったユダヤ人青年トーマス（カイ・マリーナ）だった…
…。
＜レビュー＞
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ナチスの娘の苦難の旅と成長
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タイトルの「アドルフ」とはヒットラーのこと。というわけで、ナチスを描い
た映画です。監督・脚本は、デビュー作『15歳のダイアリー』で注目された
オーストラリアの女性監督ケイト・ショートランド。
ナチスの高官の14歳の娘ローレが主人公。ヒトラーが死に父母が連合国軍に連
行されてしまった彼女は、幼い４人の弟や妹と遠く離れた祖母の家を目指して
旅に出ます。その旅の様子を描いたのがこの映画。
ナチスをテーマにした映画はたくさんありますが、この映画はかなり異質。ユ
ダヤ人の子供を描くことはよくありますが、ナチス高官の子供を描いた作品は
珍しいのではないでしょうか。
しかも、ナチスの映画と言えばヒューマニズムに満ちたものが多いのですが、
この映画はそんなものとは無縁。子供たちのあまりにも過酷な旅を赤裸々に描
き出しています。旅自体も命がけの厳しい旅ですが、その途中で信じていたナ
チスが残虐行為をしていたことを知ったローレにとって、なおさらツライ旅な
のでした。手のひらを返したように冷たい仕打ちをする周囲の人々も、彼女た
ちを苦しめます。
そして、この映画の大きな特徴が、セリフを最小限に抑えて映像の力で見せて
いくところ。予想外のカメラアングルなど凝った映像によって、登場人物の微
妙な心理を繊細に切り取っていきます。
ローレや途中から旅に加わる謎の青年が、ほとんど感情を表に出さないだけに、
その繊細な心理描写がなおさら引き立ちます。
ラストはありがちなハッピーエンドかと思わせて、実際はローレの心の傷の深
さと、ある種の成長を示して締めくくります。
ローレ役のザスキア・ローゼンダールが存在感たっぷりの演技。謎の青年役の
カイ・マリーナもなかなかの演技でした。
ナチスものにありがちなストレートに感動できる映画ではありませんが、困難
な旅を通して少女から大人へと成長する少女の物語として、十分に見応えがあ
りました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（90点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2014年1月23日（木）シネスイッチ銀座にて。午後1時50分の回
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