白ゆき姫殺人事件


(2014年 日本)(上映時間2時間6分)
監督:中村義洋
出演:井上真央、綾野剛、蓮佛美沙子、菜々緒、貫地谷しほり、金子ノブアキ、
小野恵令奈、谷村美月、染谷将太、生瀬勝久、秋野暢子、ダンカン、山下容莉
枝、宮地真緒、朝倉あき、大東駿介、草野イニ、川面千晶、野村佑香
*丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://shirayuki-movie.jp/
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<ストーリー>
日の出化粧品の美人社員・三木典子(菜々緒)が何者かに惨殺される。被害者
とは対照的に地味で特徴のない同僚女性、城野美姫(井上真央)に疑いの目が
向けられる。テレビのワイドショーのディレクター赤星雄治(綾野剛)は、知
人からの情報提供の電話をきっかけに、美姫の周辺取材を開始する。取材で得
た情報を気楽にツイッターでつぶやき始める雄治だったが……。

<レビュー>
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不確かな情報が増殖していく現代社会の闇
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『告白』の湊かなえの小説を『アヒルと鴨のコインロッカー』『ゴールデンス
ランバー』の中村義洋監督が映画化。美人OL惨殺事件をめぐるミステリー・
サスペンスです。

とくれば、犯人探しがドラマの核になるのが常道。しかし、この映画はそれを
最初から放棄しています。

では、何を描いているのか。SNSやテレビのワイドショーが、真偽不明の噂
を垂れ流して、冤罪につながりかねない事態を生み出している現代社会の闇を
描いています。

そのターゲットになるのは、事件直後に行方不明になった被害者の同僚OL美
姫。若いテレビディレクターの赤星という男は、大学時代の知人で被害者の同
僚の女から情報提供を受け、それをきっかけに関係者の取材を進めていくうち
に、美姫が犯人だと確信します。そして、それに沿った番組を作るだけでなく、
ツイッターで情報を流し続けるのでした。

映画は、様々な関係者の証言を中心に進められます。そこにワイドショーの映
像が挟み込まれ、ツイッターのつぶやきが画面に流れます。それぞれの立場で、
自分の都合のいいように語られる証言は、正直なところどこまでが真実でどこ
までウソかまったくわかりません。にも関わらず、それをもとにした番組が何
の検証もなく作られ、ツイッターで真偽不明の情報が流れます。そして、それ
が世の中に増殖して制御不能になってしまうのでした。

も〜、その様子を観ているだけで、今の世の中の異常さがコワくなってきます
ヨ。作り手は明確な社会批判をしているわけではありませんが、エンタメの形
を借りて、社会に強烈なパンチを放っているのは確かでしょう。

美姫がどんな女性かは、それぞれの証言によって違ってきます。その様々な表
情を演じ分けた井上真央の演技が見事。被害者のOL役の菜々緒、周辺の人々
を演じた蓮佛美沙子、貫地谷しほり、金子ノブアキ、小野恵令奈、谷村美月な
ども存在感を発揮しています。

ラスト近くになって、意外な真実が浮かび上がり、真犯人が判明します。ちょ
っとこのへんは都合よすぎな感じ。途中でも、リアリティにかける場面がいく
つかありました。

それでも、あえて犯人探しの醍醐味を封印して、今の時代を描こうとした作り
手の意欲を高く買います。観る価値のある力作です。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(91点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2014年3月29日(土)新宿ピカデリーにて。午後12時55分の回


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