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そこのみにて光輝く
（2013年 日本）（上映時間2時間）
監督：呉美保
出演：綾野剛、池脇千鶴、菅田将暉、高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子、田
村泰二郎
＊テアトル新宿ほかにて公開
ホームページ http://hikarikagayaku.jp/
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＜ストーリー＞
北の町の夏。ある出来事をきっかけに仕事を辞めてしまい、無為な毎日を過ご
す佐藤達夫（綾野剛）は、ある日、パチンコ屋で大城拓児（菅田将暉）と知り
合う。彼は仮釈放中で海辺に建つ粗末なバラックで家族と暮らしていた。達夫
はそこで拓児の姉、千夏（池脇千鶴）と出会う。だが、千夏は家族を守るため
に体を売って生きていた……。
＜レビュー＞
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どん底でもがき苦しむ男女の恋愛
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芥川賞候補になりながら不遇のまま41歳で自殺した作家・佐藤泰志。2010年に
『海炭市叙景』が映画化されて注目を集め、今度は唯一の長編小説が映画化。
監督は『酒井家のしあわせ』『オカンの嫁入り』の呉美保。
ドラマの核になるのはラブストーリー。かつて働いていた採石場で起きた出来
事がトラウマとなり、毎日を無為に過ごしている達夫。そして家族を養うため
に体を売って稼いでいる千夏。達夫がパチンコ屋で拓児という青年と知り合い、
彼の家で姉の千夏と出会ったことから、ドラマが転がり出します。
達夫も千夏もどん底の行き場のない日々を送っています。パチンコ屋とアパー
トと飲み屋を往復する達夫。元同僚の仕事の誘いを断り、妹からの手紙にも返
事を出しません。一方、海辺のバラックに暮らす千夏は病気の父親とその世話
をする母親を抱え、会社社長の中島との不倫関係も精算できません。おまけに、
弟の拓児は傷害事件を起こして仮釈放中。
タイトルの「そこのみにて」というのは、どん底や社会の底辺の「底」を表現
しているのかもしれませんね。
それゆえ２人の愛は順調にはいきません。様々な苦悩や葛藤を抱え、もがき苦
しみ、お互いを拒否したり、求め合ったりしていきます。そんじょそこらの甘
っちょろいラブストーリーなんか、ぶっ飛んでしまう重たい愛です。
そんな中で、少しずつ前向きになっていく２人。しかし、それがまた軋轢を起
こし、事件へとつながっていきます。
正直、けっして明るい話ではありません。どん底でもがき苦しむ２人の姿は、
観ていて息苦しくなる瞬間もあります。
ですが、それでも最後まで目が離せませんでした。何といっても人間の様々な
側面が、この映画にはきっちりと刻まれているから。そして、映像も魅力。特
に達夫と千夏の海でのラブシーンは出色です。ラストの海辺での余韻の残る
シーンも含めて、光を巧みに使い２人が抱えるものが闇ばかりではないことを
告げてくれます。
主演の綾野剛、池脇千鶴の演技も要チェック。特に池脇の鬱積した思いと、そ
れを一気に吐き出す演技が心に残りました。『ジョゼと虎と魚たち』以来、ず
っと注目してきた私としては、ここまで充実の演技を披露してくれるのはうれ
しい限り。個人的には、彼女を見るだけでもこの映画を観る価値がありました。
脇役の高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子らの演技も充実しています。
最近にしては珍しいぐらい骨太で重みのある恋愛ドラマです。あとあとになっ
て、ジワジワときましたヨ。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2014年4月26日（土）テアトル新宿にて。午後2時30分の回
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