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罪の手ざわり（天注定／A TOUCH OF SIN）
（2013年 中国・日本）（上映時間2時間9分）
監督・脚本：ジャ・ジャンクー
出演：チャオ・タオ、チアン・ウー、ワン・バオチャン、ルオ・ランシャン、
チャン・ジャーイー、リー・モン、ハン・サンミン、ワン・ホンウェイ
＊Bunkamuraル・シネマほかにて公開中。全国順次公開予定
ホームページ http://www.bitters.co.jp/tumi/
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＜ストーリー＞
山西省に暮らす炭鉱夫のダーハイ（チアン・ウー）は、村の共同所有だった炭
鉱が同級生の実業家ジャオに売却され、村長が賄賂をもらっていると考えて激
しい怒りを募らせる。重慶に妻子を残し、村を出たチョウ（ワン・バオチャ
ン）は、出稼ぎと偽り、各地で強盗を繰り返していたが、妻に疑惑を持たれて
しまう。湖北省で風俗サウナの受付係をしているシャオユー（チャオ・タオ）
は、非常識な客に札束で殴られ過激なサービスを要求される。広東省の縫製工
場で働く青年シャオホイ（ルオ・ランシャン）は、勤務中に同僚を怪我させて
しまったことがきっかけで、ナイトクラブのウェイターに転職。そこでホステ
スのリェンロン（リー・モン）と出会い、心惹かれていくが……。
＜レビュー＞
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暴力に走る人々を「武侠」の世界とリンク
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『プラットホーム』『長江哀歌』などで知られる中国の鬼才ジャ・ジャンクー
監督の久々の長編映画。映画祭でたくさん賞を取るなど、世界的には有名な監
督ですが、中国で彼の作品は上映が認められていないそうです。
この映画は4つのエピソードで構成された群像劇です。1つめは、山西省の炭鉱
夫が本来は村の共同所有のはずの炭鉱から、実業家と村長が不当に利益を得て
いると考え、怒りを募らせるお話。2つめは、重慶に妻子を残し出稼ぎしている
と言いながら、実は強盗をして仕送りしている男のお話。3つめは、湖北省で風
俗サウナの受付係をしている女性が、金にものを言わせて過激なサービスを要
求する客にブチ切れるお話。4つめは、勤務中に同僚を怪我させてしまい、ナイ
トクラブのウェイターに転職した男が、そこでホステスに恋をするというお話。
この4つのエピソードとも、最後は一線を越えて暴力的な展開を迎えます。主人
公は直接的な原因だけでなく、様々な理由から追い詰められ破滅へと突っ走り
ます。その心理の揺れ動きを最低限のセリフと、表情、しぐさで繊細に描写し
ていくのが、いかにもジャ監督らしいところ。
そして、彼らが起こす事件の背景に、拝金主義や貧富の格差、都会と地方の格
差など、今の中国の社会状況を織り込んでいるのも、いつものジャ監督の作品
と同じ（だから、中国で上映が認められないんでしょうね）。
そういう中でもがき苦しみ、何とかしようと思うものの、思い通りにならない
人々の姿が何ともやるせないですねぇ〜。
そして、今回の映画のもう一つの大きな特徴は、映画でもよく取り上げられる
「武侠」の世界をリンクさせていること。まあ、簡単に言えばヒーローが悪を
倒す庶民の娯楽ですね。映画の中でも何回か、そういう古典演劇が登場します。
風俗サウナの受付係の女がナイフを振るうシーンなんて、まさに正義のヒロイ
ンが悪を打倒すアクション映画みたい。こういうのは、ジャ監督の映画にして
は珍しいですね。
現代の中国の社会と人々をリアルにとらえた映画です。それは、けっして中国
だけでなく、世界のあちこちにも当てはまる普遍的な物語になっていると思い
ます。なかなか奥の深い映画ですよ。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（90点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2014年6月2日（月）Bunkamuraル・シネマにて。午後1時40分の回
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