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バンクーパーの朝日
（2014年 日本）（上映時間2時間13分）
監督：石井裕也
出演：妻夫木聡、亀梨和也、勝地涼、上地雄輔、池松壮亮、高畑充希、宮崎あ
おい、貫地谷しほり、ユースケ・サンタマリア、本上まなみ、田口トモロヲ、
徳井優、大鷹明良、岩松了、大杉漣、鶴見辰吾、光石研、石田えり、佐藤浩市
＊ＴＯＨＯシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ http://www.vancouver-asahi.jp/
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＜ストーリー＞
太平洋戦争直前のカナダ・バンクーバー。製材所で働く日系２世のレジー笠原
（妻夫木聡）は、仲間たちとともに日本人野球チーム"バンクーバー朝日"で活
動していた。チームは地元リーグに所属しているものの、白人チームに体力で
圧倒され負け続けていた。だが、やがてバントで出塁し足でかき回す作戦が成
功し、勝ち星を重ねていく……。
＜レビュー＞
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スポーツ映画の魅力を抑制し、日系移民の苦難を前面に
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戦前のカナダで活躍した日系人の野球チームのお話。地元のリークで試合をす
るものの、体力差の前に連戦連敗。そんな中、機動力野球に活路を見出し、連
勝を重ねるようになる……。
とくれば、これはどう考えてもスポーツ感動物語ですよね。しかし、そこに期
待しすぎるとガッカリする映画です。何しろ肝心の野球の試合が出てくるのは、
映画がスタートしてから50分近くしてからですもの。
では、それまでに何を描くのか。カナダのバンクーバーで暮らす日系人たちの
姿を、できる限りありのままに描こうとします。安い賃金で働かされ、日本人
街でひっそりと暮らす彼ら。移民１世と２世では生き方も考え方も違います。
それでも夢も希望も持てないのは同じ。おまけに戦争の影が忍び寄り、彼らの
立場はますます不安定なものになります。
『舟を編む』『ぼくたちの家族』の石井裕也監督は、本格的なセットをはじめ
細部まで凝った映像で、日系人の置かれた立場や彼らの心の内をリアルに切り
取ろうとします。それは単純な善悪や敵味方を分ける描き方ではありません。
「日本人は素晴らしい！」などというお手軽な視点もありません。「こういう
時代に翻弄されたこういう人たちがいた」と、そのまま観客に提示します。
役者が良い意味で目立たないのも、この映画の特徴でしょう。完全に石井監督
が作り上げた世界に染まっています。
それでも、中盤以降にはスポーツ感動物語の醍醐味が用意されています。快進
撃を続けるチームがいったん挫折し、再起する展開には誰もが心を躍らせるは
ず。主人公の妹が「私を野球に連れてって」を歌うシーンは感動的だし、雌雄
を決する試合のシーンもなかなかの迫力です。
ただし、そこで終わらないのが、この映画の真骨頂。戦争に翻弄され、さらに
苦難の道を歩んだ彼らを、スクリーンに刻み込みます。カナダの日系人に限ら
ず、世界中でこうしたことが起きたことを想起させる展開です。
単純なエンタメ映画にしようと思えば、いくらでもそうできた素材ですが、あ
えてそれを避けたことによって、味わい深く余韻の残る映画になりました。ま
あ、その分、お正月らしくお気楽に楽しめないのは確かですが。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（87点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき）
2014年12月28日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後1時40分の回
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