私の、息子(POZITIA COPILULUI/CHILD'S POSE)


(2013年 ルーマニア)(上映時間1時間52分)
監督:カリン・ペーター・ネッツァー
出演:ルミニツァ・ゲオルギウ、ボグダン・ドゥミトラケ、イリンカ・ゴヤ、
ナターシャ・ラーブ、フロリン・ザムフィレスク、ヴラド・イヴァノフ
*Bunkamuraル・シネマほかにて全国公開
ホームページ http://www.watashino-musuko.com/
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<ストーリー>
ルーマニアの首都ブカレストに暮らすコルネリア(ルミニツァ・ゲオルギウ)
は、夫が医師で自らは建築家というセレブ。そんな彼女の悩みは、30歳の一人
息子バルブ(ボグダン・ドゥミトラケ)との関係。顔を合わせればケンカばか
りし、子持ちの恋人とも仲が悪い。そんなある日、バルブが交通事故を起こし
て少年を死なせてしまう。するとコルネリアは、息子を守るために、金とコネ
を利用してなりふり構わぬ裏工作に奔走するのだが……。

<レビュー>
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息子を守るために異常な愛を見せる母親
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2013年のベルリン国際映画祭で金熊賞(最高賞)を獲得したルーマニア映画で
す。

主人公はセレブの女性コルネリア。彼女の一人息子が交通事故を起こして、子
供を死なせてしまいます。コルネリアは、あらゆる手段を使って息子を刑務所
に入れないように工作します。警官を賄賂で懐柔したり、目撃者の証言を金で
変えさせようとしたり。

というわけで、母親の愛情を中心に描いているものの、けっしてそれを賛美し
ているわけではありません。ほぼ全編手持ちカメラによるドキュメンタリータ
ッチの映像で、客観的かつリアルに彼女の言動を見せていきます。

コルネリアの母の愛は、もはや異常なほどです。こういうのをモンスター・マ
ザーというのでしょうか。ホラー映画かサスペンス映画を観ているみたいで、
途中で怖くなってきました。まあ、その背景には、息子との関係がうまくいっ
ていないという事実があるんですけどね。それにしてもスサマジイ突進ぶりで
す。

同時に、30歳になっても自立できずに、忸怩たる思いを抱えて母親に悪態をつ
く息子のようすも、リアルに見せていきます。

この2人を中心に登場人物の心理を繊細に切り取る演出が見事です。コルネリ
アを演じたルミニツァ・ゲオルギウの演技も素晴らしい。

さらに、汚職の蔓延や貧富の格差など、ルーマニアの社会状況もドラマの背景
として漏れこまれています。

ラスト近くで、コルネリアは息子とその彼女とともに、被害者の家を訪れます。
もちろん、それは息子の罪を軽くしたい一心での行動ですが、息子は車から外
に出ようとしません。そんな中、コルネリアが見せる涙の意味は?お芝居?そ
れとも本心からの涙?

たぶん、この映画は観る人の立場や経験によって感じ方が違うと思います。コ
ルネリアの愛情は異常なほどですが、その根っこにあるのはどんな母親にもあ
る感情ですからね。そんな彼女の行動について、監督は明確なメッセージを発
するのではなく、観客に判断を委ねています。そういう意味でも重みのある映
画だと思います。

最後の最後には、チラッと希望のようなものも見えます。コルネリアと息子の
今後について、いろいろと思いを馳せてしまいました。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
(92点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2014年7月14日(月)Bunkamuraル・シネマにて。午前10時30分の回


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