私の男


(2013年 日本)(上映時間2時間9分)
監督:熊切和嘉
出演:浅野忠信、二階堂ふみ、モロ師岡、河井青葉、山田望叶、三浦誠己、三
浦貴大、広岡由里子、安藤玉恵、吉村実子、高良健吾、藤竜也
*新宿ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://watashi-no-otoko.com/
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<ストーリー>
奥尻島を襲った津波で家族を失い、10歳で孤児となった少女、花。そんな彼女
を、遠縁だという男、淳悟(浅野忠信)が引き取る。ふたりは雪と流氷に閉ざ
された北の町で秘密を抱えながらひっそりと暮らしていた。6年後、町の有力
者の大塩(藤竜也)は、2人の秘密を知り、別れさせようと花(二階堂ふみ)
を説得するのだが……。

<レビュー>
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北の大地の禁断の愛を描いた濃密な世界
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第138回直木賞を受賞した桜庭一樹の小説の映画化です。原作は時間を逆回転さ
せる構成になっていますが、こちらは基本的に時間順に描いています。

奥尻島の津波で家族を失った女の子・花が、同じく孤独な遠縁の男・淳悟に引
き取られて養女になります。だが、少女が成長するにつれて、2人はただなら
ぬ関係になります。やがて、それに気づいた知り合いの大塩が2人を別れさせ
ようとしますが……。

というわけで、禁断の愛を描いたドラマです。原作はサスペンス色が強いので
すが、映画はそれを薄めて人間ドラマに重点を置いています。前作『海炭市叙
景』でも、北海道の寒々しい風土を効果的に使った熊切和嘉監督が、今回も雪
や流氷などを使って、登場人物の心象風景を繊細に切り取ります。

とにかく映像が美しすぎます。流氷の上で繰り広げられる花と大塩の緊迫の
シーン、血の雨に包まれていく花と淳悟のセックスシーンなど、まるでアート
のような映像が展開。それらを通して濃密な空間が生み出されています。ジ
ム・オルークによる音楽も効果的。

淳悟は初めは純粋に家族を作りたかったのだろうし、花もピュアに淳悟を慕っ
ていたはず。しかし、その思いが強ければ強いほど、世間的には許されない方
向に走ってしまいます。そんな中で、様々な思いが渦巻き、どうしようもなく
深みにはまっていく2人。まあ理性だの道徳だのと、口で言うのは簡単ですが、
そういう次元じゃないですよね。これはもはや。転落していく2人から目が離
せませんでした。

やがて東京に出た2人を、またしても予想外の出来事が襲います。そのあたり
からは、やや駆け足で描いている印象。ディテールも原作とはかなり違います。

それでもラストは衝撃的。淳悟のもとから旅立とうとする花の美しさときたら。
花を演じる二階堂ふみの並外れた才能を改めて感じました。最初の頃とおしま
いでは別人みたいなんですから。それとは対照的に老けてヨレヨレになった淳
悟を演じる浅野忠信もさすがの演技です。

最後に花は何かを言います。声は聞こえないのですが、いったい何と言ったの
でしょうか。淳悟からの旅立ちのサインなのか、それとも……。うーむ、いろ
いろと考えさせられるなぁ。

最初から最後までスクリーンに釘付けになってしまいました。これだけ濃密な
映画は久々に観ました。好き嫌いはあるでしょうが、私的には今年公開の日本
映画の中で上位にランクされそうです。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆(+1/2★)
(96点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2014年6月14日(土)池袋HUMAXシネマズ。午後1時40分の回


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