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アメリカン・ドリーマー 理想の代償（A MOST VIOLENT YEAR）
（2014年 アメリカ）（上映時間2時間5分）
監督・脚本：Ｊ・Ｃ・チャンダー
出演：オスカー・アイザック、ジェシカ・チャステイン、デヴィッド・オイェ
ロウォ、アレッサンドロ・ニヴォラ、アルバート・ブルックス
＊TOHO シネマズ シャンテほかにて全国公開
ホームページ http://american-dreamer.gaga.ne.jp/
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＜ストーリー＞
1981年のニューヨーク。石油会社を起業したアベル（オスカー・アイザック）
は、クリーンなビジネスを貫き、会社を急成長させる。そんな中、事業拡大の
ために川沿いの広大な土地を購入しようと頭金を払ったものの、積み荷のオイ
ルがトラックごと強奪される事件が相次ぎ、さらに検察当局から脱税の嫌疑を
かけられてしまう……。
＜レビュー＞
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理想の果てに追い詰められ苦悩する成り上がり男
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『マージン・コール』『オール・イズ・ロスト 〜最後の手紙〜』の若き実力
派Ｊ・Ｃ・チャンダー監督の新作です。
舞台は1981年のニューヨーク。当時は犯罪が多発する危険な街。そこで石油会
社を起こしたアベルという移民の男は、真っ当なビジネスを理想に掲げ、会社
を急成長させます。ところが、それを快く思わない者たちが、彼の会社の石油
をトラックごと強奪します。さらに、検察が脱税容疑で彼を告発しようとしま
す。こうして、どんどん彼は追い込まれていきます。
この映画でまず印象的なのが、ニューヨークの冬の凍てつくような景色。さら
に時々入ってくる凶悪事件のニュースが、観客の心を寒々とさせます。
そんな中、確固たる信念で成り上がった男の転落劇がスリリングに描かれます。
ちょうど彼は、事業拡大のために広大な土地を購入しようと手付金を払ったと
ころ。残金を支払うタイムリミットが迫ります。しかし、最悪の事態が次々に
起き、資金繰りに窮していく。そんな展開が観客をハラハラさせます。
そして、それを通して浮かび上がってくるのが、アメリカン・ドリームの実像。
誰だって、最初から不正をして成り上がろうとは思っていません。しかし、社
会の現実がそれを許しません。そこで主人公のアベルがどんな選択をするのか。
大きなカギを握るのは彼の妻。実はギャングの娘で、そういう事情もアベルを
真っ当なビジネスに駆り立てています。しかし、追い詰められた彼に対して妻
は、父に頼ることを提案。さらに、最後の最後になって、妻がある不正を行っ
ていたことも明らかになります。
というわけで、理想と現実のはざまで揺れ動きながら、もがき苦しむ主人公の
姿を骨太に描かれます。
後半では必死でサバイバルを図るアベル。トラック強奪犯との息詰まる対決な
どもありますが、けっしてスカッとできるような映画ではありません。
ラストでは事態は一応の決着をみますが、アベルが理想とする姿とは程遠いも
の。しかも、そこでは犠牲者までも出てしまいます。黒白のつく明確なラスト
ではなく、重たいものが残ります。それこそが、Ｊ・Ｃ・チャンダー監督の狙
いなのでしょう。身応え十分の人間ドラマです。
アベル役のオスカー・アイザックの厚みのある演技が印象的。妻役のジェシ
カ・チャステインも存在感がありました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年11月1日（日）TOHO シネマズ シャンテにて。午後1時の回
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