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アメリカン・スナイパー（AMERICAN SNIPER）
（2014年 アメリカ）（上映時間2時間12分）
監督：クリント・イーストウッド
出演：ブラッドリー・クーパー、シエナ・ミラー、ルーク・グライムス、ジェ
イク・マクドーマン、ケヴィン・レイス、コリー・ハードリクト、ナヴィド・
ネガーバン
＊丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://wwws.warnerbros.co.jp/americansniper/
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＜ストーリー＞
米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの隊員クリス・カイル（ブラッドリー・
クーパー）は、イラク戦争に派遣され、その驚異的な狙撃の腕前で160人以上も
の人々を射殺し、多くの仲間を救い、「レジェンド」と称賛される。だが、4度
にわたるイラク遠征を経験した結果、妻子のもとへ帰還した後に、大きな心の
傷に苦しむことになる。それでも復員兵を巡回する活動を始め、心の安定を取
り戻すのだが……。
＜レビュー＞
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イラク戦争の英雄物語だが、通底には戦争への疑問が
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巨匠クリント・イーストウッド監督の新作です。昨年秋に『ジャージー・ボー
イズ』が日本公開になったばかりなのに、何というハイペース！とても今年84
歳とは思えません。
さて、この映画はイラク戦争で160人もの人々を射殺し、「レジェンド（伝
説）」と呼ばれた米軍兵士の自伝を映画化した実録ものです。
冒頭に描かれるのは、主人公のクリスが戦場で少年に照準を向けるシーン。続
いて引き金を引いた瞬間から彼の過去が描かれます。息子を強く育てようとす
る父親のもとで育ったクリスと弟。やがてカウボーイとして活躍するものの、
生きがいを求めて軍隊に入り、厳しい訓練に耐え抜きます。そんな中で、タヤ
という女性と恋をして結婚し、子供が生まれます。そしてクリスはイラクに派
遣されます……。
この映画、ボーッと観ていると、ただの英雄礼賛映画に見えないこともありま
せん。戦場での戦いは、意外に娯楽アクション映画風。銃撃戦を中心にスリリ
ングで迫力満点のシーンの連続。敵側にクリスのライバルともいえる狙撃の名
手を配し、彼との対決をヤマ場に持ってくるあたりも、観客を楽しまる仕掛け
といえそう。
とはいえ、現在の戦場をリアルに描けば、そこは娯楽だけでは済みません。敵
味方に関係なく無造作に死んでいく人々。いつ襲われるかわからない恐怖の中
で、イラク人に暴力的に接し、反感を買う米兵たち。
そして、最も壮絶なのがクライマックスの砂嵐の中での戦いです。もうもうた
る砂塵の中で、敵か味方かも判然とせず、命からがら脱出に成功するクリスの
姿を通して、戦争というものの本質について、観客に様々なことを考えさせま
す。
さらに、それ以上に印象的なのが、４回に渡るイラクでの戦いの中で、クリス
が精神的に疲弊する姿です。帰国して妻子と過ごしていても、彼の心は戦場に
置いてきたまま。そんなクリスを妻のタヤは批判しますが、クリス自身は自分
のやっていることに疑いを持ちません。一方、クリスの周囲には弟やタヤをは
じめ戦争に疑問を持つ人々が何人か配置されています。この対比も、観客の思
考を促す効果をもたらしています。
クリスは苦悩の末、ようやく心の安定を取り戻したかに見えますが、そこで信
じられない出来事が起きます。映画のエンディングは、いかにも英雄物語風の
シーンですが、注目はその後。無音のエンドロールが延々と続きます。ここで
も、イーストウッド監督は観客に考えることを促しているのではないでしょう
か。
一見、英雄物語風でも、この映画の通底には戦争に対する疑問が明確に流れて
います。そういう意味で、実に見応えのある作品です。
それにしても、ブラッドリー・クーパーの迫真の演技。『ハングオーバー！』
の人とは思えませんね。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年2月21日（土）シネマサンシャイン池袋にて。午後2時40分の回
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