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ブリッジ・オブ・スパイ（BRIDGE
OF SPIES）
（2015年 アメリカ）（上映時間2時間22分）
監督：スティーヴン・スピルバーグ
出演：トム・ハンクス、マーク・ライランス、エイミー・ライアン、アラン・
アルダ、スコット・シェパード、セバスチャン・コッホ、オースティン・スト
ウェル、ウィル・ロジャース、ミハイル・ゴアヴォイ
＊TOHOシネマズスカラ座ほかにて全国公開
ホームページ http://www.foxmovies-jp.com/bridgeofspy/
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＜ストーリー＞
米ソ冷戦下の1957年のニューヨーク。ルドルフ・アベル（マーク・ライラン
ス）という男がソ連のスパイとして逮捕される。彼の国選弁護人として、保険
の分野でキャリアを積み重ねてきた弁護士ジェームズ・ドノヴァン（トム・ハ
ンクス）が依頼を受ける。敵国の人間を弁護することに対して強い非難を浴び
せられながら、弁護士としての職務を果たそうとするドノヴァン。彼の尽力で
アベルは死刑を免れる。それから５年後、アメリカの偵察機がソ連領空で撃墜
され、パイロットのパワーズがスパイとして拘束される。アメリカ政府はパ
ワーズを救い出すためにアベルとの交換を計画し、ドノヴァンに交渉役を依頼
するのだが……。
＜レビュー＞
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スピルバーグが描く東西冷戦下のスパイ交換劇
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スティーヴン・スピルバーグ監督が、米ソ冷戦時代のスパイ交換劇を描きまし
た。タイトルの「ブリッジ」は、交換場所の橋を示すとともに、米ソの懸け橋
になった主人公をたとえたのかもしれません。
1957年のニューヨーク。ソ連のスパイのアベルという男が逮捕されます。そし
て、その国選弁護人としてドノヴァンという弁護士が依頼を受けます。ただし、
それは「アメリカはちゃんとした法治国家だぞ」と示すためのポーズで、誰も
本気で弁護して欲しいとは思っていません。ですが、職務に忠実なドノヴァン
は全力でアベルの弁護をします。
というわけで、周囲の冷たい視線や命の危険も顧みず、アベルのために闘うド
ノヴァンの姿が描かれます。そこでは、同じく職務に忠実であろうとするアベ
ルとの友情物語も紡がれます。２人は互いに尊敬の念を持つようになります。
ドノヴァンの奮闘によって、アベルはどうにか死刑を免れます。そして５年後、
アメリカの偵察機が撃墜され、パイロットがスパイとしてソ連に捕まってしま
います。米ソ両国は、スパイ同士の交換をもくろみ、アメリカ政府はドノヴァ
ンにその交渉役を依頼します。
というわけで、後半はスパイ交換をめぐって、東ベルリン（ベルリンの壁が築
かれた直後の）を奔走するドノヴァンの姿が描かれます。
本来は地味な話ですが、ちゃんと見せる工夫をしているところがスピルバーグ
監督の真骨頂。特に後半のスパイ交換劇は、ハラハラドキドキの展開。ソ連の
スパイのアベルと、アメリカ人パイロットに加え、アメリカからの留学生も絡
む難しい交渉劇をスリリングに描きます。クライマックスの橋のシーンの盛り
上がりは半端ではありません。
実は、この映画の脚本には、あのコーエン兄弟が参加しています。骨太の歴史
ドラマを構築しつつ、あちこちでシニカルな笑いを振りまくあたりは、いかに
もという感じ。そんな脚本の巧みさも、この映画の成功の秘密でしょう。
全体を通して感じるのは、国家に対する厳しい視線。アメリカ政府は公的にス
パイ交換劇に関わりたくないため、民間人のドノヴァンに危険な任務を押し付
けます。また、偵察機のパイロットには「いざという時には自爆しろ」と命じ
ます（かつての日本軍と同じじゃん！）。
そういう国家の非情さ、無責任さは、敵方のソ連や東ドイツも同じ。そんな国
家の姿勢に疑問を呈すとともに、国家間の争いがいかに個人に犠牲を強いるか
をあぶりだします。そこに現在の社会に通じるメッセージ性を感じるのでした。
まあ、あくまでもハリウッドの王道の作品なので、ドノヴァンのヒーロー物語
的な色彩が強いのは否定できませんけどね。それでも見応えは十分です。
俳優では主演のトム・ハンクス以上に、アベル役のマーク・ライランスが素晴
らしい演技。もともとイギリスの舞台俳優だそうですが、まさに名演です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（90点）
〔鑑賞データ〕
2016年1月14日（木）日比谷スカラ座にて。午後7時15分の回
（田中ひろあき）
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