ＦＯＵＪＩＴＡ

FOUJITA

（2015年　日本・フランス）（上映時間2時間6分）
監督・脚本：小栗康平
出演：オダギリジョー、中谷美紀、アナ・ジラルド、アンジェル・ユモー、マ
リー・クレメール、加瀬亮、りりィ、岸部一徳、青木崇高、福士誠治、井川比
佐志、風間杜夫
＊角川シネマ有楽町ほかにて全国公開
ホームページ　http://foujita.info/
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＜ストーリー＞
1920年代のパリ。日本人画家フジタ（オダギリジョー）は、"乳白色の肌"と評
された裸婦の絵が評判となり、エコール・ド・パリを代表する画家の一人とな
る。美しいモデルたちや画家仲間と夜ごとお祭り騒ぎを繰り広げるが、第二次
大戦の勃発により日本へ帰国。軍に協力して数多くの戦争画を描き、日本美術
界の重鎮へと上りつめていくのだが……。

＜レビュー＞
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著名画家の二つの異なる顔をアートな映像で描く
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『泥の河』『眠る男』などで知られる小栗康平監督の久しぶりの新作映画です。
戦前にパリで活躍した日本人画家・藤田嗣治（フジタ）の人生を日仏合作で映
画化しました。

前半は、パリ時代のフジタが描かれます。３番目の妻のフランス人女性をモデ
ルに裸婦像を描き、パリの画壇で確固たる地位を築くとともに、連日連夜どん
ちゃん騒ぎを繰り広げます。

そこで興味深かったのが、彼が単なる芸術家というだけでなく、有能な営業マ
ン的資質を持っていること。あまたの画家がひしめくパリで生き残るために、
あの手この手で自分の地位を確立します。カフェで女性客のリクエストを待つ
までもなく、似顔絵を描いてサービスしたり、後輩画家たちにも生き残りの極
意を伝授したり……。

そして後半は一転して、戦時中に日本に帰国したフジタが５番目の妻（日本
人）と暮らしながら、戦争画を描いて軍部に協力する姿が描かれます。戦時色
がますます濃くなる中で、やがて疎開も経験します。

フジタが戦争画を描いたことに対しては、今でも様々な評価があるようです。
この映画では、それに対して明確な評価を下しているわけではありませんが、
いくつかのヒントを提示しています。疎開先でのキツネのエピソードを通して、
日本人全員が化かされていたことを示唆。さらに、フジタは裸婦を描こうが戦
場を描こうが、「良い絵は生き残る」という強い確信のもとに動いていたこと
も、何となく伝わってきます。

というわけで、二つの文化の中で対照的な人生を歩んだフジタの、二つのまっ
たく違う姿を描いた視点がユニーク。人間の複雑さが感じられる映画で、並の
偉人伝とは違う魅力があります。フジタを演じたオダギリジョー、５番目の妻
役の中谷美紀など役者の演技も充実。

とはいえ、この映画の最大の魅力といえば、なんといっても映像美でしょう。
前半で登場するパーティーシーンの極彩色の映像、それとは対照的な厳かな雰
囲気のアトリエの風景、後半で登場する川向こうの土地の幻想的な風景など、
すべてのシーンがアートのようです。もちろんフジタの絵も登場しますが、そ
の中でもラストに映る絵は圧巻。この映画の幕切れにふさわしい絵です。

フジタに興味のない人でも、あの映像は一見の価値がありますヨ。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（91点）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（田中ひろあき）

〔鑑賞データ〕
2015年10月25日（日）東京国際映画祭P&I上映（TOHOシネマズ六本木ヒルズ）にて

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