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フォックスキャッチャー（FOXCATCHER）
（2014年 アメリカ）（上映時間2時間15分）
監督：ベネット・ミラー
出演：スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロ、シエ
ナ・ミラー、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、アンソニー・マイケル・ホール、
ガイ・ボイド、ブレット・ライス
＊新宿ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://www.foxcatcher-movie.jp/
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＜ストーリー＞
1984年のロス五輪のレスリングで金メダルを獲得したマーク・シュルツ（チャ
ニング・テイタム）は、苦しい生活を送っていた。一方、同じ金メダリストの
兄デイヴ（マーク・ラファロ）は、妻子とともに幸せに暮らしていた。そんな
ある日、大財閥の御曹司ジョン・デュポン（スティーヴ・カレル）から、彼が
結成したレスリング・チーム"フォックスキャッチャー"に参加するように誘わ
れる。理想的な環境を手に入れ、デュポンとも良好な関係を築くマーク。だが、
やがてデイヴもチームに加入することになり、3人の運命は思わぬ方向へと転が
っていく……。
＜レビュー＞
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人間の心の闇の深さがヒシヒシと伝わる
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裁判では殺人の動機が明確に示されることが多いけれど、本当はそう簡単に割
り切れるものでもないでしょう。実際に起きた殺人事件を扱ったこの映画でも、
動機についてわかりやすい結論は提示していません。しかし、だからこそ、人
間の心の闇の深さが観客にヒシヒシと伝わってくるのです。
事件の構図は、大富豪の御曹司がオリンピックの金メダリストを射殺したとい
うもの。そこに至るまでの経緯が描かれます。
ロス五輪でレスリングで金メダルを取ったマークという男。しかし、人づきあ
いが苦手なこともあり、苦しい生活を送っています。一方、兄で同じ金メダリ
ストのデイヴは、妻子もいて安定した生活を楽しんでいます。デイヴの庇護を
受けつつ、コンプレックスを感じているマーク。
そんな彼に大財閥の御曹司のデュポンが、自分が結成するレスリング・チーム
「フォックスキャッチャー」に参加するように誘います。破格の条件に引かれ
て誘いに乗ったマークは、練習に打ち込むとともにデュポンと良好な関係を築
くのですが……。
この映画で何より強烈なのが、デュポンという男の異様な佇まいです。無表情
で何を考えているかわからない感じ。登場シーンから、圧倒的な不気味さが漂
います。その不気味さが、スクリーン全体を支配する中、彼の心の闇が少しず
つ見えてきます。
支配者として君臨することを望み、自己顕示欲を隠さず、強い愛国者であるこ
とを示そうとするデュポン。その根底には、母親に対する屈折した感情がある
ようです。
それに対してマークは、彼の支配を受け入れ、次のオリンピックを目指します。
しかし、デュポンがデイヴを強引にチームに勧誘したことをきっかけに、3人の
関係はねじれていきます。そして、ついに悲劇が……。
そうした経緯を、セリフを最小限に抑え、人物の表情やしぐさで見せていくベ
ネット・ミラー監督。この手の映画にありがちな、登場人物の過去もほとんど
語られません。まるでホラー映画のようなコワさ、そして観客に色々なことを
考えさせる余白のある演出。おかげで2時間15分があっという間に過ぎていきま
した。
スティーヴ・カレル、チャニング・テイタム、マーク・ラファロという3人の主
要キャストが素晴らしい演技を披露しています。特に、これまではコメディ俳
優だったスティーヴ・カレルの大変身ぶりにはビックリ。とても『４０歳の童
貞男』の人と同一人物だとは思えません。
人間という存在の不可解さを思い知らされて、観終わってからもズシリと心に
重いものが残りました。見応え十分の映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（96点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年2月14日（土）シネ・リーブル池袋にて。午後1時10分の回
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