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ふたつの名前を持つ少年（LAUF JUNGE LAUF／RUN BOY RUN）
（2013年 ドイツ・フランス）（上映時間1時間48分）
監督： ペペ・ダンカート
出演：アンジェイ・トカチ、カミル・トカチ、ジャネット・ハイン、ライ
ナー・ボック
＊ヒューマントラスト有楽町ほかにて公開
ホームページ http://www.futatsunonamae.com/
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＜ストーリー＞
1942年、ポーランド・ワルシャワのゲットー（強制居住区）を抜け出した８歳
のユダヤ人少年スルリック（アンジェイ・トカチ、カミル・トカチ）は、森の
中で出会った孤児グループと行動をともにする。だが、まもなくドイツ軍に追
われて一人になり、行き倒れてしまう。危ういところを親切なヤンチック夫人
に救われ、生き延びるために「ポーランド人孤児ユレク」という架空の身の上
を教え込まれる。ナチスの追手が迫ると夫人の家を出て、食べ物と宿を求めて
農家の戸をたたくスルリックだったが……。
＜レビュー＞
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幼いユダヤ人少年の過酷な逃走＆サバイバル劇
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少年を主人公にして、ナチス人によるユダヤ人迫害を描いた映画はたくさんあ
ります。しかし、この映画はその中でもかなり過酷なドラマです。しかも、実
話だというのですから……。
８歳の少年の逃走＆サバイバル劇です。ポーランドのワルシャワのユダヤ人強
制居住区を脱出したスルリックという少年が、ナチスの追跡を逃れて生き延び
ようとします。
最初は森の中の孤児グループと行動をともにするスルリック。しかし、まもな
く一人ぼっちになってしまい、飢えと寒さから行き倒れてしまいます。それを
救ったのが親切なヤンチック夫人。彼女はスルリックに対して、生き延びる方
法として「ポーランド人孤児ユレク」と名乗り、架空の身の上話を語るように
指示します。ナチスの追手が迫り、夫人の家を出たスルリックは夫人の指示通
りに行動するのですが……。
その後のスルリック少年の運命は、すさまじいものです。親切な人たちのおか
げで農場で働き口を見つけるものの、ユダヤ人であることがバレそうになって
再び流浪の身になったり、せっかく心を通わせた犬を殺されたり、ナチスに売
られそうになったり。さらに、なんと事故で片腕まで失ってしまうのです！
というわけで、かなり重苦しい出来事が続くものの、目を背けるような感じで
はありません。その理由は映像が素晴らしいから。冒頭の絵画のような森の
シーンから見事な映像の連続です。また、ナチスに捕まったスルリックが脱出
するシーンなど、ハラハラドキドキのスリリングな展開で観客を飽きさせない
工夫もあります。
そして、何よりもスルリック少年を演じた子役の演技が魅力的。実は、一卵性
双生児のアンジェイ＆カミルのトカチ兄弟が演じているのですが、これがなか
なかの好演で、様々な表情を巧みに表現しています。
スルリックは過酷な経験を通して、どんどん成長していきます。自ら率先して
嘘の身の上話を創作して人々に聞かせ、さらにユダヤ教徒であるにもかかわら
ずキリスト教の洗礼を受けます。なんというたくましさでしょう。
そして、戦争終結後、彼は大きな決断を迫られます。そこに、かつて父から言
われた言葉をかぶせ、親子の絆を際立たせる描き方が印象的。誰もが感動でき
そうなシーンです。
このドラマの背景には信仰の問題や、イスラエル建国の原点など様々な要素が
あります。ただし、あまりそれを前面には出さず、戦争によって過酷な運命に
さらされた少年のサバイバル劇という面を強調しています。そのおかげで、ナ
チスに限らず戦争全般の非人道性や空虚さがクッキリと浮き出た、普遍的な映
画になりました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年8月21日（金）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時30分の回
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