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母と暮せば
（2015年 日本）（上映時間2時間10分）
監督：山田洋次
出演：吉永小百合、二宮和也、黒木華、浅野忠信、加藤健一、広岡由里子、本
田望結、小林稔侍、辻萬長、橋爪功
＊丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://hahatokuraseba.jp/
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＜ストーリー＞
1948年8月9日、長崎の助産婦・伸子（吉永小百合）は、夫と長男、そして次男
の浩二（二宮和也）を亡くして一人で暮らしていた。浩二の恋人だった町子
（黒木華）は伸子のことを気にかけ、頻繁に通ってきていた。そんな伸子の前
に、３年前の原爆で死んだ次男の浩二（二宮和也）が幽霊になって現れる。そ
れ以来、浩二はたびたび現れて、思い出話をするようになるのだが……。
＜レビュー＞
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笑いと感動のドラマを通して伝わる非戦への願い
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井上ひさし作の舞台劇を黒木和雄監督が映画化した2004年の『父と暮せば』。
生前、井上ひさしは、これと対になる『母と暮せば』という作品を構想してい
たということで、それを山田洋次監督が映画にしました。
『父と暮せば』は広島が舞台。宮沢りえ演じる娘のもとに、原田芳雄演じる死
んだ父親が幽霊になって現れるというお話でした。そして、本作は長崎が舞台。
吉永小百合演じる母親のもとに、二宮和也演じる原爆で死んだ息子が幽霊にな
って現れます。
正直に言って、『父と暮せば』と似たような話なので、目新しさはありません。
個人的には、向こうのほうが映画としては上だと思います。それでも、母と息
子の絆の物語として、この映画も十分に良くできた映画だと思います。
ドラマのポイントになるのは、息子・浩二の恋人・町子の存在。今でも死んだ
息子に心を残す彼女に対して、母親の伸子は早く忘れて別の人と結婚してくれ
るように願っています。しかし、幽霊となって現れた浩二は、それを快く思い
ません。ですが、会話を交わしていくうちに、少しずつ彼の気持ちも変化して
いきます。
全体に笑いに満ちたドラマです。それを通して、様々なことを訴えかけてきま
す。母と息子の絆の強さはもちろん、戦争で肉親を亡くした家族のやりきれな
い思い、この世に未練を残したまま死んだ人の無念など。
さらに、そこから伝わってくるのが、原爆という非人道的な兵器や戦争そのも
のに対する怒りです。それが押しつけがましくなく、自然に伝わってきます。
そういえば井上ひさしも、山田洋次監督も、主演の吉永小百合も、戦争に反対
する姿勢を明確に示した人たち。そういう思いが、しっかり込められた映画だ
と思います。
吉永小百合、二宮和也、黒木華に加え、名舞台俳優の加藤健一の存在感が、こ
のドラマを豊かに肉付けしています。ラストの葬儀での彼の涙が切ないです。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
（田中ひろあき）
2015年12月22日（火）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時50分の回
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