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博士と彼女のセオリー（THE THEORY OF EVERYTHING）
（2014年 イギリス）（上映時間2時間4分）
監督：ジェームズ・マーシュ
出演：エディ・レッドメイン、フェリシティ・ジョーンズ、チャーリー・コッ
クス、エミリー・ワトソン、サイモン・マクバーニー、デヴィッド・シューリ
ス
＊TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開
ホームページ http://hakase.link/
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＜ストーリー＞
1963年。イギリスの名門ケンブリッジ大学大学院で理論物理学を研究する学生
スティーヴン・ホーキング（エディ・レッドメイン）は、パーティで出逢った
女性ジェーン（フェリシティ・ジョーンズ）と恋に落ちる。だが、まもなくス
ティーヴンはＡＬＳ（筋萎縮性側索硬化症）と診断され、余命２年と宣告され
てしまう。それでも、ジェーンは周囲の反対を押し切って彼と結婚する。その
後、子供にも恵まれ、研究者としても実績を上げていくスティーヴンだったが
…。
＜レビュー＞
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偉人伝とは違う天才数学者夫妻の波乱の人生
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"車椅子の天才物理学者"として知られるホーキング博士を描いた伝記映画です。
伝記映画で私が最も嫌いなパターンは、「どうだ、こんなに立派な人なんだ
ぞ！」と対象を美化するような偉人伝です。はたして、この映画は？
前半はホーキング博士の学生時代が描かれます。冒頭で、友達と自転車のス
ピード競争をするように、ごく普通の若者であるのと同時に、あまり勉強もし
ないのに課題に対して見事な答えを出す天才ぶりも発揮します。そして、恋も。
パーティで出会ったジェーンと親しくなります。２人の初々しい恋が、ほほえ
ましく描かれています。
ところが、まもなくホーキング博士はＡＬＳという難病を発症し、余命2年と宣
告されてしまいます。ショックを受けてジェーンと別れようとするホーキング
博士ですが、ジェーンは周囲の反対を押し切って結婚します。そして、子供に
も恵まれ、ホーキング博士は学者としての実績を上げていきます。
ことさらに情感をあおらずに、抑制的にドラマを展開。難病ものにありがちな、
お涙ちょうだい的なところはありません。とはいえ、病に負けずに学問に励む
ホーキング博士は立派だし、それを必死に支えるジェーンも立派。なんだかん
だ言っても、偉人伝じゃん！
と思ったら、中盤以降はあらららら。予想外の展開にびっくり。前半同様に
ホーキング博士夫妻に焦点を当てているものの、そこで描かれるのは２人の関
係の微妙な変化。
ホーキング博士の病状の進行とともに、ジェーンは子育てや自身の学問（文
学）もあって、どんどん疲れていきます。そんなところに現れたのが、ジョナ
サンという男性。介護を手伝うようになった彼の存在が、夫婦関係に大きく影
を差します。
一方、その後、ホーキング博士が言葉を失うようになると、そのサポートのた
めに女性看護師が雇われ、彼女の存在が夫婦関係を変化させます。
これって、一歩間違えば昔の昼ドラマも真っ青のダブル不倫！ ヘタすりゃド
ロドロの愛憎劇ですよ。
しかし、そんなことにはしません。直接的な描写はほとんどなく、ほんのささ
いなことを通して、夫婦関係の微妙な変化をリアルかつ繊細に描いていきます。
しかも、ジョナサンや看護師を「こういう人なら、私も好きになっちゃうか
も」という感じで描いているから、誰でも共感しちゃうんですよね。
そして、ラストではホーキング博士の研究テーマの一つ「時間」にひっかけて、
夫婦の時間をさかのぼらせるという心憎い仕掛け。こうしてヨロメキドラマは、
普遍的な愛と別れのドラマに昇華するのでした。
ジェームズ・マーシュ監督は、ドキュメンタリー映画でアカデミー賞を取った
り、IRAの女スパイを描いたサスペンス『シャドー・ダンサー』を監督したりと、
何でもうまいですね。
でも、今回の最大の功労者は、やはりホーキング夫妻を演じたエディ・レッド
メインとフェリシティ・ジョーンズでしょう。アカデミー賞を取ったレッドメ
インは、ほとんど動けない中で心理を表現する難しい役を熱演。フェリシテ
ィ・ジョーンズの時の経過を意識させる演技も絶品。この２人の演技だけでも、
観る価値のある映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（91点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
2015年3月13日（金）新宿シネマカリテにて。午後3時45分の回
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