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薄氷の殺人（白日焔火／BLACK COAL, THIN ICE）
（2014年 中国・香港）（上映時間1時間49分）
監督・脚本：ディアオ・イーナン
出演：リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、ワン・シュエビン、ワン・ジンチュ
ン、ユー・アイレイ
＊新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。全国順次
公開
ホームページ http://www.thin-ice-murder.com/
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＜ストーリー＞
1999年、中国の華北地方。15ヵ所の石炭工場で、ひとりの男のバラバラ死体が
発見される。捜査に当たるジャン刑事（リャオ・ファン）。だが、容疑者は銃
撃戦で射殺されてしまう。2004年、5年前の手口と酷似したバラバラ殺人が発生。
警察を辞めていたジャンは独自に捜査を始める。被害者たちが、5年前の被害者
の未亡人ウー・ジージェン（グイ・ルンメイ）と関係を持っていたことから、
彼女に接近するジャンだったが……。
＜レビュー＞
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鮮烈で魅惑的な映像の中国発のノワール映画
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2014年のベルリン国際映画祭で金熊賞（作品賞）と銀熊賞（主演男優賞）をダ
ブルで獲得してしまった中国発のノワール映画です。ノワール映画は過去にも
たくさん観てきましたが、こういう映画は初めてかもしれません。そのぐらい
オリジナリティにあふれています。
物語の基本的な構図は典型的なノワールもの。1999年にバラバラ殺人が発生。
ジャンという刑事が捜査に乗り出すものの、容疑者は銃撃戦の末に死んでしま
います。そして2004年。5年前と酷似した事件が発生。すでに警察を辞めていた
ジャンですが、独自に捜査に乗り出します。事件の被害者たちが、5年前の被害
者の未亡人ウーと関わりを持っていたことから、ジャンは彼女に接近するので
すが……。
この映画でまず目を引くのは映像です。冒頭の1999年の季節は夏。その熱気が
ダイレクトに伝わる映像です。そして、2004年になると一転して、凍てつくよ
うな冬の風景が登場します。このコントラストに心をわしづかみにされました。
その後も、雪のトンネル、スケート場、夜の街、観覧車など効果的な舞台設定
とともに、鮮烈かつ魅惑的な映像が続きます。それは、元刑事のジャンと謎の
女ウーの心象を投影しているかのようです。現実と夢の中を行き来するような
妖しい映像。セリフに頼らず、映像で様々なことを表現。観客に様々なことを
考えさせます。
事件を追ううちに、ジャンがウーにのめり込んでいくというのは、この手の映
画でよくある展開。ただし、それぞれのキャラに幅を持たせることで、2人の愛
のドラマに奥行きを与えています。
ジャンは1999年に妻と別れ、警察を辞めた今はささくれ立った生活。しかし、
心ひそかに復活の日を待ち望んでいるようです。そして、彼を魅了するウーは
魔性の女の表情を見せつつも、それとは違う顔も同時に見せます。
そんな両者が交錯し、ラストに向かって加速していくドラマ。そこには、中国
の社会状況もさりげなく織り込まれています。
切なさの漂うエンディングも心に残ります。ジャンとウー、それぞれの心情が、
あるアイテムを通して見事に表現されます。いつまでも余韻の残る幕切れです。
うーん、ディアオ・イーナン監督、なかなかの才能の持ち主ですね。今後も注
目です。そして、主演男優賞を獲得したジャン役のリャオ・ファンの演技も見
もの。
ですが、私的に最も心を惹かれたのはウー役のグイ・ルンメイです。2002年の
台湾のみずみずしい青春映画『藍色夏恋』で注目した彼女の、見事なファムフ
ァタールぶりを見ると、何とも感慨深いですねぇ。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（95点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
2015年1月10日（土）新宿武蔵野館にて。午後4時5分の回
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