陽だまりハウスでマラソンを(SEIN LETZTES RENNEN/BACK ON TRACK)


(2013年 ドイツ)(上映時間1時間55分)
監督・脚本:キリアン・リートホーフ
出演:ディーター・ハラーフォルデン、タチア・ザイプト、ハイケ・マカッシ
ュ、フレデリック・ラウ、カトリーン・ザース、オットー・メリース、カタ
リーナ・ローレンツ、ハインツ・W・クリュッケベルク、メーディ・ネブー、
ヨルク・ハートマン
*ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開、全国順次公開
ホームページ http://hidamarihausu.com/
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<ストーリー>
1956年のメルボルン・オリンピックで金メダルを獲得した伝説のマラソンラン
ナー、パウル・アヴァホフ(ディーター・ハラーフォルデン)。老人になった
今、最愛の妻マーゴ(チア・ザイプト)が病気になったことから、娘のビルギ
ット(イケ・マカッシュ)の願いを聞き入れ、夫婦で老人ホームに入居する。
だが、規則に縛られ、子ども扱いされる生活に我慢できず、ベルリン・マラソ
ンの完走を目指してトレーニングを始める。他の入居者たちも応援するが、施
設の職員はパウルの挑戦を中止させようとする……。

<レビュー>
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カムバックを目指す老夫婦を通して問う老いや介護
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マラソンの元名選手のおじいさんが、一念発起してカムバックを目指すドイツ
映画です。

主人公のパウルは、妻が体調不良になり、娘が多忙で面倒を見られないという
ので、仕方なく施設に入居します。しかし、歌を歌ったり、人形を作ったりと
いう、ただ死ぬのを待つようなつまらない生活に嫌気がさして、ベルリン・マ
ラソンを走ろうと決意します。

あらすじや邦題を見ると、ホンワカ系のヒューマンコメディーのように思えま
すね。確かに、そういう側面もある映画です。特に前半は、ユニークな施設の
入居者などを効果的に使い、楽しい笑いを生み出しています。

しかし、途中からは意外にマジで、考えさせられるドラマになります。マラソ
ンへのチャレンジをあきらめさせようとする施設に反抗して、パウルは妻とと
もに施設を飛び出し、施設のひどい実態を告発します。しかし、娘はそんな両
親との同居を拒否します、

そうした展開を通して、幅広い年代の人々に、老いや介護など様々なことにつ
いて考えさせます。例えば、パウルたちが入った施設は劣悪な場所ではなく、
どこにでもありそうな施設。それゆえ、観客はよりリアルかつ身近に、考えさ
せられるという仕掛けです。

そんな中でも、くっきりと描かれるのがパウルとマーゴの夫婦愛の強さ。「私
たちは海と風で一体だ」という2人。マーゴはパウルのコーチ役を務め、二人
三脚でマラソン出場を目指します。しかし、マーゴは……。

ということで、後半は、失意のパウルを仲間たちが助け、ついにクライマック
スのベルリン・マラソンへ。

パウルを演じたディーター・ハラーフォルデンは、ドイツを代表するベテラン
喜劇俳優だそうです。減量してトレーニングを積んで撮影に臨んだというだけ
に、マラソンのシーンもウソ臭さはありません。スタジアムの熱狂のシーンで
は、思わずウルッと来てしまいました。

その後のさりげない後日談も、心を温めてくれます。

ただ楽しいだけでなく、難しい問題についても考えさせてくれる味わいのある
映画。なかなかの佳作です。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(88点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2015年3月21日(土)新宿武蔵野館にて。午後3時30分の回


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