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人の望みの喜びよ
（2014年 日本）（上映時間1時間25分）
監督・脚本：杉田真一
出演：大森絢音、大石稜久、大塲駿平、渡邉享介、河野律子、荒木宏志、吉本
菜穂子、西興一朗
＊テアトル新宿にて公開
ホームページ http://nozomi-yorokobi.com/
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＜ストーリー＞
震災で両親を失った12歳の春奈（大森絢音）と5歳の翔太（大石稜久）の姉弟。
親戚の家に引き取られ、新しい生活が始まる。だが、翔太は両親が亡くなった
事実を知らされず、春名は次第に弟への心苦しさと、助けることができなかっ
た両親への罪悪感を抱えるようになる……。
＜レビュー＞
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震災で両親を亡くした姉弟の心の軌跡をリアルに
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何やら哲学的なタイトルですが、震災を題材にした映画です。震災で両親を亡
くした幼い姉弟を描いています。
冒頭は12歳の春奈が、震災の現場で必死にがれきを取り除いているシーン。し
かし、両親を助けることができず、5歳の弟・翔太とともに残されてしまいます。
まもなく２人は遠方の親戚の家に引き取られます。
というわけで、引き取られた先の家で姉妹が邪険にされたりすれば、これはも
う涙ボロボロの大悲劇なわけですが、そうではありません。オジサン、オバサ
ン、そしてオジイサンもみんな良い人。その家の小学生の息子・勝俊も、悪ガ
キという感じではありません。それゆえ、ウソ臭さのないごく自然なドラマに
なっています。
そんな中で春奈は、震災後のめまぐるしい変化に気持ちの整理がつかず、複雑
な思いを抱えていきます。それは、両親を救うことができなかったという罪悪
感、自分と弟だけが取り残されてしまった寂寥感、そして何よりも弟に対する
心苦しさです。というのも、周囲は幼い翔太に両親の死を知らせず、「遠いと
ころで治療している」とウソを言っているのです。春奈も当然それに加担する
ことになります。
そうした春奈と翔太の心情を、繊細かつリアルに切り取った描写が見事です。
例えば、春奈が転校先の小学校の廊下を歩くシーンを延々と映すことで、彼女
の心の奥底をスクリーンに刻み付けます。過剰な描写や虚飾を一切排し、徹底
的に春奈と翔太に寄り添います。それがこちらにもダイレクトに伝わってきて、
スクリーンから目が離せなくなりました。
この映画の杉田真一監督は、子供の頃に阪神淡路大震災に遭遇したそうです。
自身の体験ではないにしても、身近にこういう子供はたくさんいたはずだし、
それが深く心に刻まれていたのでしょう。そのことが、とてもよくわかる映画
です。
終盤近く、両親の死を知らない翔太は２人への思いを募らせ、それとともに春
奈の心はますます乱れていきます。同時に、引き取られた先の家の長男・勝俊
は、子供らしい不満をぶちまけ、両親を混乱に巻き込みます。そして、春奈と
翔太はある行動を起こします……。
そこからエンディングに至る展開が圧巻。特に春奈の痛烈な告白はあまりにも
切なく、心を揺さぶられました。ファンタジックなシーンを挟んだエンディン
グも印象的。解釈は人それぞれでしょうが、私的にはかすかな希望を感じたの
でした。
実は、この映画の震災が、いつ、どこで起きたものなのかは明らかにされてい
ません。その分、より普遍的で、誰にでも起こりうるドラマになっています。
派手さはないけれど、観る価値は十分にあります。私的には、今年の日本映画
の上位にランクしそうな予感。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（95点）
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年3月31日（火）テアトル新宿にて。午前10時の回
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