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ひつじ村の兄弟（HRUTAR／RAMS）
（2015年 アイスランド・デンマーク）（上映時間1時間33分）
監督・脚本：グリームル・ハゥコーナルソン
出演：シグルヅル・シグルヨンソン、テオドール・ユーリウソン、シャーロッ
テ・ボーヴィング
＊新宿武蔵野館ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://ramram.espace-sarou.com/
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＜ストーリー＞
アイスランドの人里離れた田舎の村で暮らす老兄弟グミー（シグルヅル・シグ
ルヨンソン）とキディー（テオドール・ユーリウソン）。先祖代々受け継がれ
てきた優秀な品種の羊を育てる２人だが、40年間、全く口をきかないほどの不
仲だった。そんなある日、キディーの羊が疫病に感染し、村の羊を全て殺処分
しなければならない事態となる。大切に育ててきた羊は絶滅の危機に瀕するの
だが……。
＜レビュー＞
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羊をめぐる老兄弟の確執と過酷な道行
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主要な登場人物（＆登場動物）は、じいさん２人と羊。誰が、そんな映画観る
か！……と思いきや、これがけっこうおもしろいんです。さすがに2015年のカ
ンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを取っただけのことはあります。
ドラマの舞台はアイルランドの山村。住民は牧羊で生計を立てています。グ
ミーとキディーという２人の老人も、先祖から受け継いできた品種の羊を家族
同様にかわいがり、大切に育てています。ところが、この２人、兄弟にもかか
わらず40年間も口をきいていない、不仲が続いていたのです。
この映画、セリフは最小限。その代わり人物の表情や行動で、彼らの心の内を
見せていきます。例えば、毎年行われる羊の品評会での、２人のライバル意識
メラメラの様子とか。実にうまく見せていくんですね。
ドラマの転機になるのは、キディーの羊が恐ろしい病気に感染したこと。その
ため、村のすべての羊を殺処分しなければいけなくなります。
この時、最初に病気を発見したのはグミー。おかげで２人の仲はますます険悪
になります。キディーは当局に従う姿勢を示すのに対して、グミーは反抗して
大暴れしたりします。しかし、やがて意外な事実が判明して、２人の仲が変化
します。
この映画のもう一つの主役はアイスランドの大自然。黒くどんよりした、いか
にも寒々しい風景。そして冬の過酷すぎる寒さ（一歩間違えば凍死します）。
それを効果的に使ったのがクライマックスです。２人の老人と羊による過酷な
道行の結果は？
ということで、ラストは圧巻です。じいさん２人の裸の抱擁が、これだけ美し
く感動的な映画がかつてあったでしょうか。そこから彼らの過去と今の人生が
そのまま伝わってきて、映画では描かれていないその後が気になってしまいま
す。実に余韻の残るラストです。
欲を言えば、クライマックスの道行はもう少し長くても良かったかな。まあ、
あんまり長いと２人のじいさん、本当に凍死しかねませんけど（笑）。
去年の東京国際映画祭で最優秀監督賞を受賞してこの間日本公開された『馬々
と人間たち』もそうでしたが、この映画もアイスランドを舞台にして、自然や
動物をうまく使ったユニークな映画です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年12月23日（水）新宿武蔵野館にて。午後２時の回
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