|
駆込み女と駆出し男
（2015年 日本）（上映時間2時間23分）
監督・脚本：原田眞人
出演：大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり、内山理名、陽月華、キムラ緑子、木
場勝己、神野三鈴、武田真治、北村有起哉、橋本じゅん、山崎一、麿赤兒、中
村嘉葎雄、樹木希林、堤真一、山崎努
＊新宿ピカデリーほかにて全国公開
http://kakekomi-movie.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
江戸時代後期。夫が妻と離縁することは簡単だったが、妻のほうから離縁する
ことはほぼ不可能だった。そんな中、鎌倉の尼寺・東慶寺に駆け込んだ女は、
そこで２年を過ごせば離婚が成立することになっていた。東慶寺の御用宿に居
候している見習い医師で戯作者に憧れる信次郎（大泉洋）は、叔母の源兵衛
（樹木希林）の離縁調停を手伝い始める。そんな彼の前に、顔にヤケドの痕が
ある鉄練り職人じょご（戸田恵梨香）と、豪商の囲われ者のお吟（満島ひか
り）が現れる……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
駆け込み寺の女たちの悲喜こもごもの人間模様
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
井上ひさしの小説『東慶寺花だより』を原案にした時代劇。監督・脚本は『ク
ライマーズ・ハイ』『わが母の記』の原田眞人。この監督は、どんな素材もそ
れなりの水準に仕上げるだけに、初の時代劇となる今回も抜かりがありません。
時代は江戸時代末期。女性の側から離婚を申し出るのが難しかった時代ですが、
東慶寺という尼寺に駆け込み、そこで２年我慢して過ごせば離婚が成立するこ
とになっていました。いわば縁切り寺ですね。
寺に入るには、まず御用宿に預けられて、そこで身元調査が行われます。その
御用宿の主人である叔母の手伝いをしているのが、見習い医師の信次郎。これ
がタイトルにある「駆出し男」。
そして、そんな信次郎の前に現れたのが、顔にヤケドの痕がある鉄練り職人じ
ょごと、豪商のメカケのお吟です。この２人を中心にした東慶寺の女たちが、
「駆け込み女」というわけです。
とにかくいろんな要素がテンコ盛りのドラマです。幕府の娯楽に対する締め付
けが厳しくなる世相を背景に、東慶寺に駆け込んだ女たちの悲喜こもごもの人
間模様が展開。さらに、じょごと信次郎のピュアな心の通い合いも描かれます。
後半には、狂った剣士の殴り込みまで登場。涙あり、感動あり、チャンバラあ
りのドラマです。
そして、この映画の大きなポイントが笑い。井上ひさしの小説が下敷きらしく、
全編にユーモアが散りばめられています。信次郎が女たちの顔を見ないで診察
するシーンなんてコントみたい。はては、お尻の穴から薬を入れるところまで
出てきたりして。
ラスト近くでは幕府が東慶寺潰しのために密偵を送り込むサスペンスフルな展
開まであります。信次郎が大勢の前で、駆け込み女の想像妊娠を見抜くシーン
など、見せ場もたくさん用意されています。細部まで凝った映像も見ものです
（ちょっと凝り過ぎのところもありますが）。
残念なのは、あまりにも詰め込み過ぎなため、ラスト近くがバタバタと「駆け
込み」ならぬ「駆け足」になっているところ。幕府の陰謀めいた話も、いつの
間にか雲散霧消してました。
俳優では、大泉洋が相変わらずいい味を出していますが、この映画ではやっぱ
り戸田恵梨香、満島ひかりなど女優陣の好演が光りますね。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年5月31日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後3時30分
[「か」のページ] |
|