きみはいい子


(2014年 日本)(上映時間2時間1分)
監督:呉美保
出演:高良健吾、尾野真千子、池脇千鶴、高橋和也、喜多道枝、黒川芽以、内
田慈、松嶋亮太、加部亜門、富田靖子
*テアトル新宿ほかにて公開
ホームページ http://iiko-movie.com/
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<ストーリー>
小学4年生の担任を努める新任教師、岡野(高良健吾)は、一生懸命に仕事をす
るものの、生徒に振り回され、モンスターペアレントにも悩まされる。夫が海
外に単身赴任中の雅美(尾野真千子)は、ママ友とうまく付き合い、良い母親
を演じていたが、自宅では3歳の娘・あやねに手を上げていた。独居老人のあ
きこ(喜多道枝)は、認知症への不安をかき立てられていた……。

<レビュー>
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困難な中でも人と人のつながりに希望を見出す優しい心
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前作『そこのみにて光輝く』で数々の賞を獲得した(私もあの作品は去年のベ
スト1級の映画だと思いました)呉美保監督の作品です。原作は中脇初枝の同
名短編集だそうです。

ある街で暮らす3人の物語が同時並行で描かれます。まずは新任の小学校教師
のお話。まじめで一生懸命に仕事をするものの、ワガママな子供たちに振り回
され、さらにモンスターペアレントにも苦しめられ、学級崩壊状態に追い込ま
れてしまいます。

2つめは夫が単身赴任中で3歳の娘を持つ母親のお話。表面的にはママ友と仲
良くし、良い母親を演じている彼女ですが、実は家では娘に手を上げています。

そして3つめは1人暮らしの老女のお話。スーパーでお金を払わずに出てきて
しまったのをきっかけに、認知症への不安を抱えるようになります。

同じ街の出来事とはいえ、3つのエピソードに直接的な絡みはナシ(多少は関
係するところもありますが)。幼児虐待、いじめ、モンスターペアレント、認
知症といったシリアスな社会問題を扱っているとはいえ、それをグリグリとえ
ぐり出すような描き方ではありません。そのため一歩間違えると、とりとめの
ない話になりがちです。

例えばドラマ的に盛り上げるなら、同じ群像劇でも虐待にテーマを絞った方が
効果的かもしれませんね。

しかし、そうしなかったことで、かえってリアルで現実との接点が明確な映画
になりました。しかも、全体が緊張感に満ちています。『そこのみにて光り輝
く』でも見られた鮮烈な映像が、それを強く後押ししています。

中心になる3人の人物は、いずれも現在の自分に悩み、苦しんでいます。どう
していいかわかりません。そんな中で、映画の終盤では解決のヒントが提示さ
れます。

それは何かといえば、人と人とのつながりです。特に、小学校教師と若い母親
のエピソードでは、「抱きしめる」ということが大きな鍵になります。小学校
教師が「宿題」に対する感想を生徒に聞くドキュメンタリータッチのシーン。
若い母親がママ友によって癒される感動的なシーン。どちらも素晴らしいシー
ンで心に残ります。そして、老女も障がいを持つ児童とのふれあいによって再
生していきます。

シリアスなテーマを扱ってはいても、観終わってすがすがしく、温かな気持ち
になりました。どんなに苦しくても希望がある。人と人のつながりが、きっと
良い方向へと導いてくれる。そんな呉監督の優しい気持ちが感じられました。
文句なしに良い映画です。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
(91点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2015年2月27日(金)新宿シネマカリテにて。午後12時50分の回



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