味園ユニバース
(2015年 日本)(上映時間1時間43分)
監督:山下敦弘
出演:渋谷すばる、二階堂ふみ、鈴木紗理奈、川原克己、松岡依都美、宇野祥
平、松澤匠、野口貴史、康すおん、赤犬
*TOHOシネマズ 六本木ヒルズほかにて全国公開
ホームページ http://misono.gaga.ne.jp/
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<ストーリー>
大阪の広場で行われていたバンド「赤犬」のライブに、男(渋谷すばる)が乱
入し、マイクを奪って歌い出す。その歌声に観客は圧倒され、赤犬のマネージ
ャーのカスミ(二階堂ふみ)も興味を抱く。だが、男は記憶喪失だった。カス
ミは男を「ポチ男」と名付け、自宅に住まわせる。そして、ポチ男を赤犬の
ボーカルに据えるのだが……。
<レビュー>
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歌を効果的に使った山下敦弘監督の音楽映画
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『もらとりあむタマ子』など、ダメ人間を描かせたら絶品の山下敦弘監督。今
回も主人公はダメ人間。しかも記憶喪失です。
舞台は大阪。広場でライブを行っていたバンド「赤犬」。そこに突然謎の男が
乱入して、「あの頃は、2人して!」と熱唱します。しかし、男はそのまま気絶。
実は彼は記憶喪失。赤犬のマネージャーのカスミは、彼を放っておけず、「ポ
チ男」と名付けて祖父と暮らす自宅に住まわせます。まもなく、赤犬のボーカ
ルがケガしたことから、ポチ男をボーカルに据えるのですが……。
この映画、構成的には粗い感じです。冒頭では、ポチ男が刑務所を出所して誰
かに襲撃される場面が登場します。そこで、彼がマトモな人生を歩んでこなか
ったことが、すぐにわかってしまいます。その他にも、後半に唐突な展開があ
ったりして、ツッコミどころがけっこうあります。
過去をなくしたポチ男に対して、父親の突然の死で時間が止まったままのカス
ミという対比を打ち出しているにもかかわらず、カスミのドラマが弱いのも難
点。
それでも、そういう欠点を圧倒するのが、主演の渋谷すばる(関ジャニ∞)の
歌を中心とした音楽です。要所で音楽を効果的に使い、ポチ男とカスミの心情
を描き出すところが秀逸です。後半、ポチ男は記憶を取り戻し、ドラマは大き
く動きます。そこでも、グダグダと細かな説明をせず、歌で彼の心情を示しま
す。
そこで大きな役割を果たす赤犬というバンドですが、大阪の実在のバンドで、
ロックから歌謡曲まで幅広く演奏するエンタメバンドだそうです。そのメン
バーがオッサンばかりということで、若いカスミとのコンビがユーモラスです。
山下監督の映画にはオフビートの笑いが多いけれど、今回もあちこちに独特の
間の笑いが用意されています。
また、大阪の風景、大阪弁などもいい味を出しています。クライマックスの舞
台となる「味園ユニバース」は、かつてのキャバレーで、閉店後はライブなど
に貸し出されているとか。
というわけで、この映画は音楽映画です。山下監督には、過去にブルーハーツ
の曲を効果的に使った青春ドラマ『リンダ リンダ リンダ』という作品があ
りましたが、音楽の力でドラマを展開していくという点では、それに連なる作
品といえるかも。
それにしても、二階堂ふみは映画のミューズですね。素晴らしい!
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(88点)
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(田中ひろあき)
〔鑑賞データ〕 2015年2月16日(月)新宿バルト9にて。午後12時15分
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