野火


(2014年 日本)(上映時間1時間27分)
監督・製作・脚本・編集:塚本晋也
出演:塚本晋也、リリー・フランキー、中村達也、森優作、中村優子、山本浩
司、神高貴宏、辻岡正人、入江庸仁、山内まも留
*ユーロスペースほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://nobi-movie.com/
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<ストーリー>
日本軍の敗北が濃厚となった第二次世界大戦末期のフィリピン戦線。結核を患
った田村一等兵(塚本晋也)は野戦病院行きを命じられ、部隊から追い出され
る。しかし、病院では入院を拒絶され、再び舞い戻った部隊からも拒否されて
しまう。行き場を失い、激しい空腹と戦いながら、原野を彷徨い始めた田村だ
が……。

<レビュー>
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「これが戦場だ!」という塚本監督の叫びが聞こえる
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こんにちは。戦争映画鑑賞家のぽちです。大岡昇平による戦争文学の傑作「野
火」を、『鉄男』『六月の蛇』の塚本晋也監督が映画化したというので、さっ
そく観てきました。ちなみに、「野火」は1959年に市川崑も映画化しています。

今回の映画における塚本監督の意図は明確です。戦場の凄惨さ、兵士たちの狂
気をリアルに観客に提示することです。そのため、エンディングの後日談を除
けば、すべてが戦場のシーンになっています。

いやぁ〜、それにしてもスゴイです。肺病になって所属部隊と野戦病院のどち
らからも拒絶された主人公の田村一等兵がジャングルをさまようのですが、こ
れがスゴイとしか言いようがありません。

鬱蒼としたジャングルに転がる無数の死体。血だらけなんて当たり前、体の
パーツがバラバラになって転がっています。おまけに、敗残兵が待ち伏せされ
て攻撃される場面では、兵士の腕がちぎれ、足がふっ飛び、脳みそや内臓まで
飛び散ります。そうした凄惨なシーンと対照的に、時に挿入される美しい自然
の姿も印象的です。

安直な感情移入を排して、徹頭徹尾リアルに現場を見せようとする塚本監督。
ハリウッド映画でお金をかけて撮ったならともかく、低予算の日本映画でこれ
だけの映像を構築した塚本監督に脱帽です。

戦場がスゴければ人間もスゴイのがこの映画。ああいう戦場で戦っているうち
に、みんな狂気にとり付かれていきます。田村一等兵は力尽きて倒れたところ
を、足の悪い安田と永松に助けられます。安田は永松に敗残兵を狩らせ、どう
やらその人肉を食っているらしいのです。田村は人肉食への嫌悪や、自分が狩
られるかもしれないという恐怖を抱えつつ、自分も正気と狂気の狭間でもがき
ます。

戦争をネタに使っただけの感動のドラマが横行する日本。そういう中で、「こ
れが戦場だ!」という塚本監督の強烈なメッセージを感じずにはいられません。
この映画を観ると、戦争に従軍した兵士が精神を病むのも当然だと思いますヨ。
本当に地獄絵図ですもん。

予算節約のため自身で主役を演じた塚本監督、静かな狂気を見せたリリー・フ
ランキーなど、役者たちの熱演も見ごたえアリ。

この映画によって日本の戦争映画の新境地が開かれました。戦争のなんたるか
も知らずに、戦争を語る政治家どもに見せてやりたい映画です(特に安倍ちゃ
んとか、若者のデモを批判した自民党のバカ議員ね)。それでもあんたら戦争
を肯定する気か?

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆(+1/2★)
(95点)

≪ぽちのオススメ度≫

★★★★☆
                            (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2015年8月5日(水)ユーロスペースにて。午前11時の回


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