黄金のアデーレ 名画の帰還(WOMAN IN GOLD)


(2015年 アメリカ・イギリス)(上映時間1時間49分)
監督:サイモン・カーティス
出演:ヘレン・ミレン、ライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール、ケイ
ティ・ホームズ、タチアナ・マズラニー、マックス・アイアンズ、チャール
ズ・ダンス、エリザベス・マクガヴァン、ジョナサン・プライス
*TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
ホームページ http://golden.gaga.ne.jp/
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<ストーリー>
第二次世界大戦中にナチスに占領された祖国オーストリアを捨て、夫とともに
アメリカへ亡命したダヤ人女性のマリア・アルトマ(ヘレン・ミレン)。1998
年、82歳になったマリアは亡き姉がオーストリア政府に対してクリムトの名画"
黄金のアデーレ"の返還を求めていたことを知る。それはマリアの伯母アデーレ
の肖像画で、ナチスに略奪されたものだった。マリアは駆け出しの弁護士ラン
ディ(ライアン・レイノルズ)に協力を仰いで、名画を取り戻そうとするのだ
が……。

<レビュー>
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名画にまつわる法廷劇と過去の悲劇を巧みに配す
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第二次世界大戦中にナチスが略奪したクリムトの名画「黄金のアデーレ」をめ
ぐる物語。実話がベースになっています。

主人公は、第二次世界大戦中にナチスに占領された祖国オーストリアを捨て、
夫とアメリカに渡ったマリアというユダヤ人女性。82歳になった彼女は新米弁
護士のランディを雇って、クリムトの名画「黄金のアデーレ」を返してほしい
という要求をオーストリア政府につきつけます。それはマリアたちの家からナ
チスが略奪して、今はオーストリアの美術館にある絵。しかも、モデルはマリ
アの叔母。こうして裁判闘争が開始されます。

というわけで前半に描かれるのは、オーストラリアでの絵の返還に関する争い。
そして、後半は舞台をアメリカに移した裁判闘争が展開されます。そこで魅力
的なのが、ヘレン・ミレン演じるマリアとライアン・レイノルズ演じるランデ
ィの二人三脚での奮闘劇。

マリアはキュートなおばあちゃん。ユーモアたっぷりで、時には減らず口を叩
いたりしてランディを苦笑させます。同時に、かつてナチスに迫害された家族
の思い出を胸に、つい弱気になって前に進むのをためらったりします。そんな
様々な顔を持つマリアをオスカー女優のヘレン・ミレンが見事に表現。まさに
熟練の演技です。

一方、新米弁護士のランディは有名作曲家の子孫でありながら、妻子を養うた
めに必死で弁護士事務所に就活する状態。それでも、マリアに引っ張り込まれ
るように裁判に関わるようになり、自らもユダヤ人という出自に目覚め、人間
としても成長していきます。

この2人のコンビが絶妙です。片方が強気になると片方が弱気になるというよ
うに、それぞれの感情を交差させてバディムービー的な面白さを生み出してい
ます。

そんな現在進行形のドラマと並行して描かれるのが、かつてマリアが経験した
オーストリア時代の出来事。叔母アデルとの交流、自身の結婚式、ナチスの進
出、自らの逃走と両親への悔恨の思い……。そうした過去の悲喜こもごもの出
来事が、現在のマリアのバックグラウンドとしてしっかりスクリーンに刻まれ、
観客の感情を揺さぶっていきます。

もちろんそれは悲しい出来事なのですが、マリア夫妻の逃亡劇では、ハラハラ
ドキドキのサスペンス映画並みの面白さも用意されています。

このあたりは、『マリリン 7日間の恋』のサイモン・カーティス監督のバラ
ンスの良い演出が光ります。

さて、結末はどうなったのか。それはここでは伏せておきますが、なかなか味
わいのあるエンディング。ラストでは実際の2人のその後についての報告もあ
ります。最初から最後まで良くできた映画で観て損はないでしょう。

ところで、ランディの妻役のケイティ・ホームズ。言わずと知れたトム・ク
ルーズの元妻ですが、久々に見ましたよ〜。なかなかの演技でしたね。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
(90点)
                            (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2015年11月28日(土)シネ・リーブル池袋にて。午後2時10分の回


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