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ロマンス
（2015年 日本）（上映時間1時間37分）
監督・脚本：タナダユキ
出演：大島優子、大倉孝二、野嵜好美、窪田正孝、西牟田恵
＊ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開
ホームページ http://movie-romance.com/
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＜ストーリー＞
北條鉢子（大島優子）は新宿と箱根を往復する特急ロマンスカーのアテンダン
ト。ある日、仕事中に桜庭（大倉孝二）と名乗る怪しげな映画プロデューサー
の乗客とトラブルになる。鉢子が破り捨てた母の手紙を勝手に読んだ桜庭は、
「自殺しようとしている」と決めつけて、そのまま鉢子を母親探しに連れ出す。
こうして桜庭とともに箱根で、何年も会っていない母親を捜し回るハメになっ
た鉢子だったが……。
＜レビュー＞
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心に過去の傷を持つデコボココンビの箱根珍道中
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小田急が全面協力で、タイトルが「ロマンス」とくれば、新宿と箱根を往復す
る特急ロマンスカーのＰＲ映画かと思いきや、そこはさすがに『ふがいない僕
は空を見た』のタナダユキ監督。『百万円と苦虫女』以来、7年ぶりのオリジナ
ル作品となるこの映画でも、きちんとした人間ドラマが描かれています。
ロマンスカーで車内販売などをするアテンダントの鉢子という女性が主人公。
仕事はできる彼女ですが、何やらヒモのようなダメ男と暮らすなど私生活は問
題アリのようす。そんなある日、仕事中に自称映画プロデューサーの桜庭とい
うオッサンとトラブルになった彼女は、破り捨てた母からの手紙を桜庭に読ま
れてしまいます。桜庭は「これは自殺しようとしている！」と決めつけて、鉢
子を無理やり連れだします。こうして鉢子は桜庭とともに箱根の町で母親探し
をすることになります。
鉢子と桜庭の１日だけの箱根プチ旅行は、爆笑の連続。口から先に生まれてき
たような桜庭と、勝気な鉢子がぶつかり合って、まるで漫才のようなテンポの
良い笑いを生み出します。２人のジェネレーションギャップを生かした、『Ｅ．
Ｔ．』などの映画ネタも楽しいところ。
ただし、楽しい旅の中でも２人の屈折した心理が見えてきます。鉢子は、父と
離婚した後に男をとっかえひっかえした母親に対して、強いわだかまりを感じ
ています。それが現在の生活にも影響している模様。かつての家族旅行の回想
をはさみながら、そんな彼女の気持ちがリアルに描き出されます。
一方、桜庭も妻と離婚して娘と会えない状況が明らかになります。いえいえ、
それだけでなく彼にはもっと大きな秘密があるのでした。
２人が心に抱えたものが一気に爆発するのが、仕方なく入ったラブホでのシー
ン。特に長回しで、２人の心情の吐露と激情を描いたシーンが圧巻です。「自
分の優しいときは、いつも男とうまくいっていなかった」と母の思い出を語る
鉢子。映画製作にまつわるトラブルを告白する桜庭。お互いに思うようになら
ない人生を抱えていることを理解しあう２人。翌日の車中での「いい日旅立
ち」の歌も印象的です。
ラストは余白を残した終わり方。その後の２人がどうなるのか、あれこれ考え
させます。ですが、少なくとも鉢子は前向きに人生をリセットしそうな気がし
ますね。彼女の内面が確実に変化したことが、ごく自然に伝わってきました。
『神の月』でも好演していた大島優子ですが、今回も存在感たっぷり。大倉孝
二とのデコボココンビぶりが絶品です。今後もますます女優として成長しそう
な気がします。
心の傷を抱えたり、何かを失った者たちに対するタナダユキ監督の温かな視線
が感じられる映画でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年9月2日（水）新宿武蔵野館にて。午後12時25分の回
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