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サイの季節（FASLE KARGADAN HA）
（2012年 イラク・トルコ）（上映時間1時間33分）
監督・脚本・製作：バフマン・ゴバディ
出演：ベヘルーズ・ヴォスギー、モニカ・ベルッチ、イルマズ・アルドアン、
カネル・シンドルク、ベレン・サート
＊シネマート新宿ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://rhinoseason-espacesarou.com/
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＜ストーリー＞
イランで成功を収めた詩人サヘル（ベヘルーズ・ヴォスギー）は、司令官の娘
で美しい妻ミナ（モニカ・ベルッチ）と幸せに暮らしていた。だが、運転手の
アクバルはひそかにミナに思いを寄せ、やがてイラン革命が起きると、２人を
密告して獄中に送る……。
＜レビュー＞
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現実と非現実が交錯する映像詩
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『酔っぱらった馬の時間』『ペルシャ猫を誰も知らない』などが日本でも公開
されたイラン人のバフマン・ゴバディ監督の映画。どういう経緯かわかりませ
んが、「マーティン・スコセッシPresents」となっています。
主人公はイランで成功した詩人のサヘル。しかし、彼は獄中で30年近く暮らし
て、ようやく出所したところです。いったい何があったのか？ということで、
現在進行形のドラマと過去の出来事が並行して描かれます。
実はサヘルは、司令官の娘のミナという奥さんと幸せに暮らしていたのですが、
運転手のアクバルがミナを好きになって横恋慕します。そして、イラン革命が
起きると２人を無実の罪で密告して監獄に送ってしまったのです。
ついに出獄したサヘルは、妻が住むトルコのイスタンブールに出かけますが…
…。
サスペンス的な要素もある映画ですが、そちらはそれほど期待しないほうがい
いです。サヘルと妻を陥れた人物は最初からバレバレですからね。それでも、
最後まで見入ってしまいました。
その最大の理由は、圧巻の映像。元々ゴバディ監督は現実と非現実を交錯させ
る映像で有名ですが、今回もそういう映像が満載です。空からカメが落下し、
サイ（動物の）が突然道を走ったり、馬が車の助手席に首を突っ込んで来たり
……。登場人物の愛憎や喪失感など、様々な感情がそこに込められています。
すべてのシーンが絵画のような美しさ。主人公のサヘルが詩人ということで、
何度も詩が登場することもあり、まさに映像詩という感じの作品です。
舞台となる街の荒涼とした平原や荒れた海なども、何とも言えない魅力を生み
出しています。
この話は実話をもとにしているそうです。そしてゴバディ監督自身が、現在は
イラン当局と対立して外国で亡命状態の生活を送っているということで、自分
自身の境遇もこの映画に投影しているようです。
もちろん、こうした悲劇を生み出したイランの社会状況に対する批判が、この
映画の根底にあります。しかし、それを越えて、世界中のいたるところで、
様々な理由で社会に翻弄される人々の悲しみが、より普遍的に伝わってくる作
品になっています。
ラストも、人によってどうとでも取れる場面ですが、かすかな光のようなもの
が見えた気がしました。
主演のイランの俳優ベヘルーズ・ヴォスギー、そしてイタリアの名女優モニ
カ・ベルッチの演技も魅力的。ほとんどセリフのない役柄ながら、２人とも心
の奥がしっかり伝わってきました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（86点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年7月11日（土）シネマート新宿にて。午後1時35分の回
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