|
先生と迷い猫
（2015年 日本）（上映時間1時間47分）
監督：深川栄洋
出演：イッセー尾形、染谷将太、北乃きい、ピエール瀧、嶋田久作、佐々木す
み江、カンニング竹山、久保田紗友、もたいまさこ、岸本加世子
＊新宿バルト9ほかにて全国公開
ホームページ http://www.sensei-neko.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
定年退職した元校長先生の森衣恭一（イッセー尾形）は、妻に先立たれ、近所
とも溶け込めずに孤独に暮らしていた。彼の家には、亡き妻がかわいがってい
た三毛猫のミイがやってきたが、妻を思い出すのが辛い森衣はミイを追い払っ
ていた。一方、ミイは様々な名前で呼ばれ、町の人たちにかわいがられていた。
そんなある日、ミイがぱったりと来なくなる。そうなると逆に寂しくなった恭
一は、ミイの姿を捜しまわるようになる。町の人たちも心配になり、一緒にミ
イを捜すようになるのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
猫を通して変わっていく偏屈な老人の心
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
なんだか最近、猫を取り上げた映画が多くありませんか？まあ、猫好きにはう
れしいことでしょうけど。この映画も猫が大フィーチャーされています。
主人公は退職した元校長の森衣。妻に先立たれ一人暮らしで孤独な彼は、偏屈
な性格ゆえに近所の人々からも浮いた存在。そんな中、近所には野良猫がいて、
町の様々な人から違う名前で呼ばれてかわいがられています。そして、森衣の
家にもその猫が出入りしています。しかし、亡き妻がかわいがっていたことか
ら、どうしても妻を思い出してしまう森衣は、いつも猫を追い出します。
前半は、自由に町の人々の間を行き来する野良猫の生態を生き生きと描写。特
に猫目線のローアングルのカメラで、猫や周囲の人々の姿をとらえた映像が印
象的です。出演している猫もなかなかの芸達者で、ごく自然な演技（？）を見
せています。
それと同時に、風変わりで孤独な老人・森衣の日常も描かれます。演じるイッ
セー尾形は、様々な人物をデフォルメして大げさに演じる一人芝居で人気を得
た役者。映像になるとそれが鼻につくこともありますが、今回は浮世離れした
変人キャラなので違和感はありません。しかも、そこからオフビートの笑いが
生まれ、観客を楽しませてくれます。なかでも、染谷将太演じる役所の職員と
のやりとりはかなりの面白さ。
後半、問題の野良猫は姿を消します。そうなってみると寂しくなり、冷たくあ
しらったことを後悔した森衣は、一生懸命に猫を捜すようになります。それを
見た町の人たちも協力して、猫捜しに乗り出します。
というわけで、頑なだった森衣の心に変化が生じ、町の人々と打ち解けていく
姿が描かれます。ほのぼのとした味わいのある映画で、心がポカポカしてきま
した。『60歳のラブレター』『神様のカルテ』などの若手実力派・深川栄洋監
督の作品だけに、ソツなくつくられています。
ただし、人間ドラマが薄いのが物足りないところ。主人公の頑なな心の変化と
亡き妻との絆はきちんと描かれているものの、その他の人々のドラマは食い足
りません。北乃きい演じる若い女の子（森衣の学校の卒業生らしい）、岸本加
世子演じる美容師なども何かを抱えていそうなのですが、それが描かれていな
いのがもったいないところ。
最後のほうで、猫捜しの人々が集うシーンがありますが、あのへんをもっと膨
らませればよかったのでは？
それでも温かな気持ちになりたい方にはオススメの映画です。猫好きの人にも
ね。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（81点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年10月13日（火）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後2時25分の回
[「せ」のページ] |
|