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天使が消えた街（THE FACE OF AN ANGEL）
（2014年 イギリス・イタリア・スペイン）（上映時間1時間41分）
監督：マイケル・ウィンターボトム
出演：ダニエル・ブリュール、ケイト・ベッキンセイル、ヴァレリオ・マスタ
ンドレア、カーラ・デルヴィーニュ、ルーシー・コウ、ネイサン・スチュアー
ト＝ジャレット
＊ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://www.angel-kieta.com/
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＜ストーリー＞
2011年、イタリア・トスカーナ州シエナで、4年前に起きた殺人事件の控訴審が
始まろうとしていた。その事件は、イギリス人留学生エリザベスが殺害され、
ルームメイトの美しいアメリカ人留学生ジェシカとその恋人たちが逮捕された
事件だった。そんな中、ロンドン在住の映画監督トーマス・ラング（ダニエ
ル・ブリュール）が事件を映画化するためにイタリアにやって来る。アメリカ
人女性ジャーナリストのシモーン・フォード（ケイト・ベッキンセイル）の協
力で取材を進めるトーマスだったが……。
＜レビュー＞
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殺人事件の裁判を前に迷走する映画監督の軌跡
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イタリア・ペルージャで実際に起きた女子留学生殺人事件をモチーフにした映
画です。この事件は、被疑者が美人留学生だったため、欧米で大々的に報道さ
れたそうです。
主人公は映画監督のトーマス。イギリスに住む彼は、事件を映画化しようとイ
タリアに取材にやってきます。そして、事件の控訴審が始まります……。
ネタがネタなので、サスペンス的な要素は当然あります。謎に満ちた事件で決
定的な証拠もなく、逮捕されたルームメイトの美人留学生たちの証言も二転三
転する中で一審は有罪。しかし、それに疑いを持つ人も多く、真相は藪の中で
す。それをトーマスが追いかけます。
同時に社会派の要素もあります。逮捕されたのが被害者のルームメイトでしか
も美人留学生というので、マスコミ報道が過熱。被害者や被疑者について、あ
る事ない事書きたてて大騒ぎを繰り広げています。それをトーマスの目を通し
て批判的に描きます。
しかし、それ以上にこの映画の中心になっているのが、主人公トーマスの迷い
です。彼は妻と離婚し、幼い娘の親権でもめています。また、仕事の上ではし
ばらく映画が撮れず、この映画に再起をかけています。
取材を続けるうちに、彼は今度の映画をいわゆるエンタメ的な作品ではなく、
ダンテの『神曲』を下敷きにした、主人公の内面を描く映画にしたいと考える
ようになります。しかし、製作側はもっとわかりやすい映画を希望します。
というわけで、いろいろな面でグジャグジャになったまま、迷い続ける中年男
の言動が描かれます。そこには、彼に協力する女性ジャーナリストや、親しく
なった美人留学生、裏の世界を知るらしい怪しい男なども絡んできます、
ついにはドラッグにまで手を出して、どんどん深みにはまっていくトーマス。
彼の悪夢や空想なども映像化しながら、スリリングに、そしてミステリアスに
その葛藤を描いていくウィンターボトム監督。さすがにイギリスの実力派監督
だけあります。
さて、トーマスは結局どこに向かうのか。事件に一応の決着がついてのち、彼
の視点は被害者とその家族に向いていきます。考えてみればマスコミ報道で最
も欠落していたのがそこなわけで、そこに目を向けることで彼自身も新たな出
発に向かうのでしょう。
正直粗いところも多いし、サスペンス的な要素に期待すると裏切られますが、
中年男の葛藤と再生のドラマとして観れば、まずまずの映画だと思います。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
（84点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年9月5日（土）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後1時35分の回
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