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トイレのピエタ
（2015年 日本）（上映時間2時間）
監督・脚本：松永大司
出演：野田洋次郎、杉咲花、リリー・フランキー、市川紗椰、古舘寛治、森下
能幸、澤田陸、MEGUMI、岩松了、大竹しのぶ、宮沢りえ
＊新宿ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://toilet-pieta.com/
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＜ストーリー＞
画家の夢を諦めて窓ふきのバイトをしている園田宏（野田洋次郎）。ある日、
突然倒れて病院に運ばれ、精密検査を受ける。その結果は家族と聞かなければ
いけなかったが、郷里の両親に連絡する気になれず、病院のロビーで見かけた
女子高生・真衣（杉咲花）に妹役を演じてもらう。診断結果は、胃ガンで余命
３ヵ月。抗ガン剤治療の副作用と漠然とした死の恐怖に苦しみながら、入院生
活を送る宏だったが……。
＜レビュー＞
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余命宣告を受けた男と女子高生のぶつかり合い
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ドキュメンタリー映画『ピュ〜ぴる』で注目を集めた松永大司監督が、手塚治
虫の病床日記にヒントを得て書き上げたオリジナル脚本を映画化した劇映画デ
ビュー作です。簡単に言えば難病モノですが、よくある「お涙ちょうだい映
画」にはなっていません。
主人公は画家になる夢を諦めて、窓ふきのバイトをしている宏という28歳の青
年。ある日、体調不良になり、病院で検査を受けます。検査結果は家族ととも
に聞かねばならないものの、故郷から両親を呼ぶ気にならず、大学時代の同級
生の元カノに頼みます。しかし、２人はケンカになり、仕方なく宏は病院のロ
ビーでトラブっていた女子高生・真衣に妹役を頼みます。そして判明した検査
結果は、「胃がんで余命３カ月」というもの……。
というわけで、宏と真衣の切ないラブストーリーでも始まりそうですが、そう
はなりません。ラブストーリー的な要素も多少はありますが、それ以上に前面
に出るのが２人の心の交流、というより荒々しいぶつかり合いですね。
宏は抗がん剤の副作用に苦しみ、死への漠然とした恐怖を抱えて、どうしよう
もない状態に陥っています。一方、真衣は家庭にも学校にも居場所がなく、そ
の持って行き場のない思いを他人にぶつけて、悪態ばかりついています。そん
な２人の複雑な心の内を、松永監督はそのままスクリーンに刻み込んでいます。
ある意味、ドキュメンタリー的なタッチかもしれません。
宏と真衣のぶつかり合いは、様々な印象的なシーンで表現されます。特にプー
ルでのシーンは、美しく、そして生命力にあふれています。
真衣との交流に加え、小児がんの子供とその母親（宮沢りえ）、隣のベッドの
風変わりながん患者（リリー・フランキー）などとのふれあいも、宏の心を揺
り動かしていきます。
終盤、宏は再び絵筆を握り、トイレに絵を描きます。それがタイトルにある
「ピエタ」。キリスト教の宗教画ですが、これが凄まじいエネルギーに満ち、
「今俺は生きているんだ！！」という宏の思いを実感させるシーンになってい
ます。そんな宏の思いを受けたラストの真衣の姿も印象に残ります。
宏役を演じた野田洋次郎は、ロックバンド"RADWIMPS"のヴォーカル＆ギターだ
そうです。もちろん演技は未熟ですが、監督の意を受けて独特の存在感を発揮
しています。そして、真衣役の杉咲花の力強い演技も見逃せません。これから
も大注目です。
難病モノの切ないラブストーリーを期待すると裏切られます。生きることと死
ぬことの意味を、真正面からとらえた映画です。基本は悲しい話ですが、観終
わって伝わってくるのは悲しさよりも、前向きさです。粗削りなところもあり
ますが、十分に観る価値のある良い映画だと思います。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（91点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年6月7日（日）シネ・リーブル池袋にて。午後2時の回
[「と」のページ] |
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