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海にかかる霧（海霧／HAEMOO）
（2014年 韓国）（上映時間1時間51分）
監督：シム・ソンボ
出演：キム・ユンソク、パク・ユチョン、キム・サンホ、イ・ヒジュン、ム
ン・ソングン、ユ・スンモク、ハン・イェリ、チョン・インギ、ユン・ジェム
ン
＊角川シネマ新宿ほかにて公開
ホームページ http://www.umikiri-movie.com/
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＜ストーリー＞
不況と不漁で苦しむ漁船チョンジン号のカン船長（キム・ユンソク）は、中国
人の密航者を運ぶ闇の仕事を請け負う。沖合で密航船と合流し、密航者たちを
乗り換えさせるが、ホンメ（ハン・イェリ）という若い娘が海に落ちてしまう。
新人船員のドンシク（パク・ユチョン）は、荒海に飛び込んで彼女を救い、そ
の後、２人は心を通わせていく。そんな中、監視船の目を避けるべく、カン船
長が密航者たちを船倉に閉じ込めたことから、事態は思わぬ方向へと発展して
いく……。
＜レビュー＞
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極限状況の中で見える人間の奥底のどす黒さ
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『殺人の追憶』『グエムル 漢江の怪物』などで知られるポン・ジュノ監督が
製作と共同脚本を担当した映画。『殺人の追憶』の脚本を担当したシム・ソン
ボの監督デビュー作です。2001年に韓国で実際に起こった「テチャン号事件」
を題材にした舞台劇の映画化だそうです。
ドラマの舞台になるのは、古い漁船のチョンジン号。不況と不漁に苦しみ、周
囲からは「もう廃船にしろ」と言われる中、カン船長は、中国からの密航者
（朝鮮族）を運ぶ闇の仕事を引き受けてしまいます。
カン船長以下、船員たちは簡単な仕事と思い海に出ますが、実際はなかなか大
変。密航船からチョンジン号に乗り移る際には、ホンメという若い女性が海に
落ちてしまいます。それでも優しい心の青年ドンシクが、身を挺して彼女を救
います。そんな中、監視船の目から逃れるために、カン船長は密航者たちを船
倉に閉じ込めます。ところが、それがとんでもないことになってしまうので
す！！！
というわけで、そこからは筆舌に尽くしがたい展開に突入します。自分たちの
やったことを隠ぺいしようとする一心で、カン船長は次第に狂気の世界に足を
踏み入れます。それによって、まるでスプラッターホラーのような、気色悪い
シーンも登場。
他の船員たちも、どんどんおかしくなっていきます。良心の呵責に耐えられな
くなる者、ひたすら船長に従う者、金に執着する者、性欲に走る者。閉鎖され
た空間で、極限状態に追い込まれた人々を通して、人間の奥底にあるどす黒い
ものが、「これでもか！」と容赦なく描かれていきます。おー、コワッ！
事件の前のチョンジン号は、家長的役割のカン船長の下、疑似家族のような関
係にありました。それがいともたやすく崩壊していきます。あるいは新興宗教
の暴走や、戦場での蛮行なども連想させる展開です。
ただ一人、無垢な心のままの青年ドンシクが救いといえば救いですが、彼もま
た心を通わせた女性ホンメを守るために、あらゆる手段を使い、サバイバルを
図ります。ドンシクとホンメの関係は平常時ならお手軽なものですが、これだ
けの極限状態の中ではまさに純愛にまで高まって見えます。
クライマックスは沈みゆく船でのギリギリの攻防戦。そして、いったんはハッ
ピーエンドかと思わせておいて、６年後の後日談でほろ苦い余韻を残してくれ
ます。容赦ない描写だけでなく、この深みのあるエンディング、海霧に包まれ
た幽霊船のような船の様子など、シム・ソンボ監督、なかなかやるなぁ〜とい
う感じです。
俳優では、狂気の船長役のキム・ユンソク（『チェイサー』『哀しき獣』）、
ドンシク役の人気グループ「JYJ」のユチョン、そしていかに薄幸そうな表情が
たまらないホンメ役のハン・イェリが印象に残りました。
「人間ってコワイ……」とつくづく思わせられる背筋ゾクゾクものの映画です。
よくもまあ、こんな話を映画にしたものです。日本じゃ、まず考えられません
よね。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（88点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年6月8日（月）角川シネマ新宿にて。午前11時50分の回
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