|
わたしに会うまでの1600キロ（WILD）
（2014年 アメリカ）（上映時間1時間56分）
監督：ジャン＝マルク・ヴァレ
出演：リース・ウィザースプーン、ローラ・ダーン、トーマス・サドスキー、
ミキール・ハースマン、ギャビー・ホフマン、キーン・マクレイ、ケヴィン・
ランキン、Ｗ・アール・ブラウン
＊TOHOシネマズシャンテほかにて全国公開
ホームページ http://www.foxmovies-jp.com/1600kilo/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
母の死にショックを受け、夫を裏切って薬と男に溺れて結婚生活を破綻させた
シェリル（リース・ウィザースプーン）は、人生をリセットしようと、自然歩
道パシフィック・クレスト・トレイルの1600kmを踏破する旅に出る。過酷な環
境に苦しみ、命の危険にさらされながらも、必死で歩き続けるシェリルだった
が……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
過酷な一人旅に出た女性の過去の傷と再生
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
過酷な旅に出た女性の実話を基にした映画といえば、最近では主人公がオース
トラリアの荒野をラクダと旅したミア・ワシコウスカ主演の『奇跡の２０００
マイル』がありました。あちらは青春の自分探し的な要素の強い旅。こちらも
邦題はそれっぽいけれど、実際はかなり違います。
主人公のシェリルという女性が旅するのは、アメリカ西海岸を南北に縦断する
自然歩道パシフィック・クレスト・トレイル（ＰＣＴ）。そこをたった一人で1
600キロを踏破しようというのです。
これがまさに苦行。冒頭で、はがれそうになった足の爪を引っぺがして、痛み
に悶絶して靴を崖から落としてしまうシーンがあるのですが、それがすべてを
象徴しています。あまりにも重たい荷物を背負い、酷暑の中で渇きに苦しみ、
雪山に行く手を阻まれと苦難の連続です。
その一方で旅仲間などと触れ合い、サポートを受けたりもするのですが、それ
にしても過酷すぎる旅。まるで自分を痛めつけているみたい。そのようすがリ
アルに描かれるので、観ていて自分も旅をしているような気持になってしまい
ます。
いったいどうして彼女はこんな旅に出たのか。それがドラマの合間に、回想と
して挟み込まれます。アル中＆ＤＶの父と別れてシェリルと弟を育てた母。そ
の母との微妙な感情のすれ違い。あまりにも早すぎる母の死。それに耐えきれ
ず、優しい夫を裏切って男と薬に走るシェリルの自堕落ぶり。そして離婚……。
説明らしい説明は省き、短めのシーンやフラッシュを多用。それを通して彼女
が旅に出るに至った過去が、ごく自然に伝わるようになっています。この回想
の挟み方が絶妙。『ダラス・バイヤーズクラブ』のジャン＝マルク・ヴァレ監
督の演出と、『ハイ・フィデリティ』『アバウト・ア・ボーイ』の原作者ニッ
ク・ホーンビィの脚本が見事です。サイモン＆ガーファンクルなどの音楽も効
果的。
過酷な旅の果てに、ようやく前を向くようになったシェリル。ラストに語られ
る彼女のその後の人生が、観客の心をホッとさせてくれます。
主演のリース・ウィザースプーンは、『キューティ・ブロンド』などのコメデ
ィの印象が強かったけれど、深みのあるシリアスな演技もできることを実証。
母親役のローラ・ダーンともども、素晴らしい演技でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年9月1日（火）角川シネマ新宿にて。午後1時50分の回
[「わ」のページ] |
|