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ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲（FEHER ISTEN）
（2014年 ハンガリー・ドイツ・スウェーデン）（上映時間1時間59分）
監督：コルネル・ムンドルッツォ
出演：ジョーフィア・プソッタ、シャンドール・ジョーテール、ラースロー・
ガールフィ、リリ・ホルヴァート
＊新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開
ホームページ http://whitegod.net/
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＜ストーリー＞
13歳の少女リリ（ジョーフィア・プソッタ）は、母親が仕事で長期間留守にす
るため、母と離婚した父親ダニエルに預けられる。孤独なリリにとって愛犬
ハーゲンだけが心の支えだったが、ダニエルはハーゲンを嫌う。ちょうどこの
国では、雑種犬の飼い主に重税を課す法律ができたところだった。そんな中、
ハーゲンはダニエルによって遠く離れた場所に捨てられてしまう。リリは必死
に行方を捜し続ける。一方、ハーゲンは次々に危機に襲われ、やがて思わぬ行
動に出る……。
＜レビュー＞
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孤独な少女の愛犬の受難と反乱をユニークなスタイルで描く
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ハンガリーのコルネル・ムンドルッツォ監督による、今まで見たこともないよ
うなユニークな映画です。第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門のグラン
プリに輝きました。
冒頭、自転車をこぐ少女の後ろから大量の犬が街を疾走するシーンが登場しま
す。な、なんじゃ？これは。
続いて、そこから少し時間をさかのぼって、冒頭の少女リリが愛犬ハーゲンを
かわいがるシーンが登場。リリは孤独な少女で、ハーゲンだけが心の支えだっ
たのです。そんな中、母親が海外に出かけることになり、その間にリリは離れ
て暮らす父親に預けられることになります。もちろんハーゲンも一緒に。
ところが、父親はハーゲンを嫌います。おまけに、最近になって雑種犬に重税
を課す法律ができたことから、父親はハーゲンを捨ててしまいます。
というわけで、ここからは捨てられたハーゲンの受難が描かれます。野犬狩り
の手を逃れて逃走するものの、ホームレスの手で業者に売られ、闘犬に仕立て
られてしまうハーゲン。それを犬目線のローアングルの映像を中心にリアルに
描き出します。特にハーゲンがどんどん凶暴化していく様子は背筋ゾクゾクも
の。同時に、彼を虐げる人間の怖さも際立ちます。ムンドルッツォ監督の迫力
ある演出に加え、ハーゲンを演じた犬の名演技も光りますね。よくこれだけの
映像が撮れたものだと感心するばかり。
その一方で、必死にハーゲンを捜すリリの姿も並行して描かれます。そこでは、
父親とのギクシャクした関係、好きな男の子とのやりとりなども見られます。
そして彼女がトランペット奏者として所属するオーケストラの話もていねいに
描かれます。
リリを演じたジョーフィア・プソッタもなかなかの存在感です。いわゆる美少
女なのですが、孤独な少女ということでほとんど笑わない演技が印象的です。
さてさて、やがて保護施設に入れられたハーゲンは、仲間とともにそこを脱出
して、彼らのリーダーとなり人間社会に反乱を企てます。て、『猿の惑星』か
い？その凄惨な復讐劇にはホラー映画的な色合いも感じられます。
ラスト近くの大量の犬の疾走シーンが圧巻。そして、ついにハーゲンと再会す
るリリ。はたして、ハーゲンはリリを覚えているのか？
というところで、トランペット奏者というリリの設定を巧みに生かしたエンデ
ィングが登場。静寂に満ちた、余韻の残る終わり方です。
犬たちの反乱に、虐げられた者たちの反逆の寓話を見て取ることもできそう。
そのほかにも、いろいろなことを考えさせられます。そこが単なるホラー映画
やパニック映画とは違う、深みのある作品になった理由でしょう。ありきたり
でない映画を観たい方はぜひ。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2015年11月29日（日）新宿シネマカリテにて。午後1時の回
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